福島県教育センター所報ふくしま No.30(S52/1977.2) -006/025page
とっては何んの重要な相互関係もなない昔(sounds)というものを,慣用的な文字記号を用いて結びつけ,正しく書き表わしていくという活動である。<2> の活動は英語学習のつづり手法(spelling)にあたるものである。英語学習においては,この活動がやや進むと,いくつかの語句や文を組み合わせて英文をつくるという作業になる。すなわち,文型練習,文法的な練習問題,簡単な対話文の構成,あまり複雑でない和文英訳などを行う時の書く活動(writing practice)がこれにあたる。<3> の活動は,本当の意味での創作活動による作文(composition)であり,英語学習のいわゆる自由作文(free composition)とか創作作文(creative writing)がこれを目ざしている。
言うまでもなく,中学校および高校における英語学習の書く指導の目標は,「身近なことについて,初歩的なあるいは基本的な英語を用いて,書くことができるようにさせる」ことであり,この目標を達成するために,いろいろな実践上の創意工夫が必要となるわけである。ここに中学校および高校の指導要領に示されている書く指導に関しての言語活動を次のような表にまとめてみた。中・高の関連が「書く」指導においてもいかに密接でなければならないかを再認識したい。
○ 「書く」ことの言語活動
高 A
・
B
中
1
1 語,句および文を見て書き写すこと。 2 文を聞いて書き取ること。
3 身近なことについて文を書くこと。*
中 2
4 日本語と文の意味を英語の文に書くこと。 5 行ったことなどを文に書くこと。*
中 3
6 行ったことや考えたことを,数個の文に書くこと。* 7 日記形式および手紙形式の文を書くこと。
B 8 文をパラフレーズして書くこと。 (注)1.中1:中学校1年
2.高A:高等学校 英語A
3.*印:高Aと高Bでは,<3> ,<9> ,<6> は,一つにまとめられ,「近身なことや行なったことなどについて,文を書くこと。」となる。
3.「書く」指導の発展段階
英語学習の過程は,一般に,観察(observation)→認識・理解(recognition)→模倣(imitation)→反復(repetition)→運用(production)という一連のサイクルの連続である。
この学習の過程は,書く指導を展開していく場合にもそのまま適用できる。すなわち,モデルになる文字,語,句および文などをよく「観察」し,意味や内容を「理解」し,「模放」をして書き写し(copy),さらにじゅうぶん「反復」練習を積んで,最後に自己表現としての「運用」にまで高めていくことである。この学習過程は,前に述べたP.0.Dの「書く」ことについての定義や学習指導要領に示された書くことの言語活動の内容にも一致していることが理解されるであろう。
ここで,「書く」指導の展開を,六つの段階に区切って,もう少し具体的に考えてみよう。
-1-「書く」指導の第1段階(Copying)
「書く」指導の最初の段階にあたる「書き写し」(copy-ing)の学習は,言語活動としては迫力のない作業として凝視されがちであるが,これは正しいことではない。英語は生徒にとって,特に初めて学ぶ中学生にとっては,驚くほど不思議に思われる面をたくさん含んでおり,自信をもって書けるようになるまでじゅぶん指導する必要がある。
書き写しをする教材はすでに口頭で練習をし,読みをすませたものを原則とする。また書き写しをするさい,生徒には繰り返しいわせる必要がある。これは,その文字が表わす音を印象深く心にとめさせるのに役立つとともに,基本的な文や文型についての反復練習にもなるからである。句読点を正しくつけて正確に書き写す練習がある程度すんだら,この段階の仕上げとして暗記のための書き写しの作業に移る。写しながらその文を反復させ,次に文字を見ないで数回そらでいわせるとよい。
書き写しの作業を効果的に行うためには,いわゆる書く前の口頭練習(oral preporation before writing)が欠かせないことに注意したい。
-2-「書く」指導の第2段階 (Reproduction)
この段階では,書き写しの段階で学習したものをもう一度そのまま書き出し「再現」(reproduction)させ,訂正のために原文と見くらべるという作業を行う。これは第1段階で正確に書き写すという習慣がついていれば,容易であり,案外楽しく行はれるものである。
この作業は,教師の読みに合わせて行はれる場合には,「書き取り」(dictation)となる。また,覚えた英文を教師のだす質問の答えとして書かせたり,文型練習のための口頭練習や読みの練習の代わりに書かせるという型式をとることもできよう。