福島県教育センター所報ふくしま No.32(S52/1977.8) -022/033page

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教育相談事例研究 その1

登校拒否児童・生徒の早期発見とその取り扱い

研究・相談部 佐 藤 守 男

 昭和35-36年を境に,神経症的登校拒否が都市部に急増し始め,やがては都市部から周辺地区へ,周辺地区から農山村地区へと波及し,現在も全域にわたって増加の一途をたどっている。福島県もこの例にもれず,当教育相談係が扱った登校拒否の子どもたちの数は,下表から察知できるように激増に激増を重ねてきている。このことから,県下各学校にはかなりの数の登校拒否児が潜在し,あるいは今後発生するものと思われる。さらに,登校拒否の発生は,ますます高年齢化しつつあることも目立ってきており,それにともない,治療の期間が長期化し(中学生以上の治療には最低3か月,一般には6か月以上)治療方法もきわめて高等なものが要求されるようになってきている。上記のような理由から,各学校における登校拒否症児童・生徒の早期発見早期治療が焦眉の急となる。ただ,ここで注意しなければならないことは,早期発見をしても,その拒否症状がどのようなものであるのかによって扱いを変えなければならない点である。したがって今回は,登校拒否症の分類とその取り扱いかたを述べるにとどめ,次回より,より具体的な事例研究に触れてみたい。

表1 登校拒否による来談者数
学校別\年度 47 48 49 50 51 52(4〜6)
小学校 2 2 4 8 14 0
中学校 0 4 6 8 18 14
高等学校 1 3 9 7 12 14
3 9 19 23 44 25

表2 長欠者の分類
表2 長欠者の分類

1) 分類別とりあつかい

 表2からわかるように,一口で長欠と言われるものの中にもいろいろの型があり,登校拒否症という症侯鮮は,1を除く 2 以下のものを指すのが普通である

 なお,医学的な分野からの分類によれば,5の神経症的長欠(学校恐怖症)のみが登校拒否としてとりあつかわれるのが一般的な傾向である。

イ 分類1〜2に関するとりあつかいは,学校および家庭の協力によって処理できるものである。

口 分類3の意図的長欠者は,高校生にのみ発生し,「あんな学校には行く必要が無い」と積極的に学校を拒否する型であり,援助がきわめて困難である。

ハ 4の怠学傾向の長欠のうち,無気力型については分類1〜2と同じ扱いでよい。しかし,非行型に関しては,それに加えて,補導センター,警察などの協力を求めて処理しなければならない。

二 神経症による登校拒否に対しては,学校側で登校刺激を加えれば加える程,その症状がひどくなるので,登校刺激を一切中止し,教育センター・児童相談所・精神衛生センターなどの専門機関に扱いをまかせ,協力しあいながら処理する必要がある。

ホ 精神障害によるものは,当然医師の診断と治療を受けさせなければならない。

(注) 長欠者のとりあつかいの細部については,紀要15号を参照にされたい。

2) 登校拒否症か怠休(学)かの判別チェックリスト

 ー般的に,われわれ教師は登校拒否症で休んでいる者を,怠休者と見あやまることが多い。したがって,扱い方の違うこの長欠を,どの種類の休みなのかを識別し,適切なる指導方針をたてる必要が生ずる。このような意味あいから,当センターでは下表のようなチェックリストを作り,判別を試みている。各学校でもご利用いただきたい。欠席が目立つ児童・生徒が生じたら,まず全職員の協カを得て,正しい情報を多く集め,さらに父兄の協力を求めながらチェックリストの完成を試みる(該当項目をOで囲む)なお,この数値がいくつ以上は怠休というような尺度はなく,どちらが多いかで傾向判別をされたい。

(A欄回答数十B欄回答数)/19×100=登校拒否的徴標指数

(C欄回答数十D欄同答数)/21×100=怠休的傾向徴標指数


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