福島県教育センター所報ふくしま No.32(S52/1977.8) -024/033page
特別活動シリーズ No2
望ましい集団活動の指導(その2)
第1研修部 大 草 栄 治
3. 集団活動の育成
(1) 集団活動の性格
特別活動の領域に属するすべての教育活動が,「集団活動」という特徴をもつものであるかどうかについて考えてみると,違和感が感じられる活動もある。
特に,学校行事とよばれる教育活動のなかには,児童生徒集団を活動の主体とするには,直接的にはやや無理と思われるものもないではない。
しかしながら,「望ましい集団活動を通して」という特別活動の基本的な性格づけをする総括目標の中の規定について考えてみると,それは,特別活動としてのすべての教育活動に通ずる特質を端的に表現したものであり,教育課程における各教科や道徳の領城と異なる性格を鮮明に表現したものでもあるといえよう。
(注)今回の改訂指導要領においても「望まLい集団活動を通Lて」という特別活動の性格にかかわる目標の規定は,全く同じである。
そこで,教育課程を実施する「授業」としてすすめられる特別活動のなかの教育活動は,徐々ながらも,「望ましい集団活動」という特質に近づけるような実践的努力に支えられたものとしなければならない。
そして,そうするところにこそ,総括目標の中の規定として掲げられたことの意義を見出すべきであろう。
(1) 「集団活動」とは,心理集団(相互理解,相互尊重をもとにした相互作用のある集団)としての成熟をはかりながら,集団が主体となってすすめる活動である。
そして,集団の成員間の「相互作用」(社会的相互作用)を基盤とLて,「なすことによって学ぶ」という原理のもとに,「共通な目標に対する自覚」とその目標達成に応ずる「役割の分担と実践」をともなっているものでなければならない。
(2) 「望ましい集団活動」とは、上に述べたような心理集団としてふさわしい活動であるとともに,集団の成員ひとりひとリの社会性や自主性とともに,集団の自主性(協同性)を育てるための「自主的活動」でなければならない。
そしてまた,集団活動を通して育てられるひとリひとリの社会性や自主性が,実際の活動経験を通して身につき伸ばされる「実践活動」でなければならない。
ア. 「社会性」とは,社会(あるいは集団〕をつくったり社会に「順応」したり,あるいは「適応」したりする性質をいう。したがって,社会性は人間の本性としてもとらえられ,それは,人間関係のなかで育てられ,衣・食・住・言語・習慣などの中で人間としての在り方ができるようになる。云い換えるなら,人間関係のない状態のなかで育った人があったとするならば,社会性とLての可能性を伸ばす機会がないので,人間としては,極めて大きな欠陥を持つとになるということになる。
したがって,社会性を伸ばすことによってこそ,本当の意味で児童生徒を.人間として育てることになるのだということできる。
しかしながら,現実においては,純粋で理想的な,人間関係によってのみ成リ立っているような社会(あるいは集団)は,日常的であるはずはない。そこで,常に理想の社会(あるいは集団)を願望することともに,住みにくい杜会(あるいは集団)にも順応しようとしている。
したがって,相互理解,相互尊重の心情をもとに寛容な態度で一歩ずっ努力し,よりよい社会(あるいは集団)を築きあげるように努カさせる−心理的な相互作用を活発にさせる−必要がある。つまり,社会(あるいは集団)に順応し,適応しながら,よりよい社会(あるいは集団)への道をたどらせるところに,人間の社会性向上の道があり,人間形成の道があるといえる。
社会性は,個人の社会的適応,人格形成,社会的成熟,社会的行動(他人とのコミュニケーション,集団への参加,社会(あるいは集団)生活への適応など)の発達,対人関係の発達,社会的学習(相互作用による学習)の過程で,適切な場と機会が設けられ,それに応じた具体的な援助(励ます)・指導(育てる)によって育てられる。
特に,こうした場としての特別活動におけるそれぞれの活動は,自分の属する集団の望ましい成熟をはかリながら集団活動としてすすめられるものである以上,社会性の育成は集団活動