福島県教育センター所報ふくしま No.32(S52/1977.8) -025/033page

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の特質とする,「自主的活動」と「実践活動」の基盤となる重要な意義をもつものである。

(注) 「順応」とは,環境条件に自分自身をあわせてゆくことである。

(注) 「適応」とは,自分の欲求とそれに対する制約との間にバランスがとれるように,自分の欲求をコントロールし,ひどい欲求不満に陥ることなく,円満な対人関係を保ちながら生活してゆくことができる状態をいう。ややくわしく述べると,人間の欲求には,飢え,かわきのような生命の保持に必要な最低限の生理的欲求から,人の愛情や集団への所属というような心理的な欲求,さらに,地位や権カといった社会的な欲求などのさまざまなものがあり,それらを充たすために人間は行動を起す。だが,それは常に充足できるとは限らず,金や時間,他人の反対や批判のような外的制約や,良心にそむくとかプライドがきずつくというような内的制約がつきまとってくる。そこでこのような制約と自分の欲求とのバランスがとれるように欲求をコントロールすることがたいせつとなる。

イ. 「自主性」とは,他人からの指示や強制ではなく,他に依存せず,「自分の自由意志」によって判断し行動することである。特に,真の自分の「正しい」自由意志の存在がたいせつである。自分の「正しい」自由意志とは,現代杜会での相互依存の人間関係−相互理解,相互尊重を基調とする自発的な協同,相互義務感,平等な権利意識など−を前提として,自分は他人との関係において存在し,自分の一方的な尊厳だけが存在するものではないとする自由意志のことである。真の「自分の正しい自由意志」による判断と行動は,自分の信念となって持続されるべきものである。

 しかしながら,このような水準に到達させることは,児童生徒の発達段階からみて,過大な期待というべき外はないが,児童生徒の「発達課題」をふまえて,こうした水準に無理なくより接近させようとする意図と計画と継続的な努力−指示,命令などによる強制ではない「助言」を中心とする教師の働きかけ−をたいせつにしなければならない。

 したがって,厳密な意味での「自主活動」は,小・中学校の児童生徒の教育的な課題としては当を得ていないので,「自主的活動」としてとらえ,集団活動を通してひとりひとりの自主性と集団の自主性(協同性)を育てようとするものである。

(注) 「発達課題」とは,子どもが乳児期,幼児期・児童期・青年期というように一つの段階から次の段階へと発達(心理的な働きの変化)していくそれぞれの段階で,ぜひ到達しなければならない目標,あるいはどうしても解決しておかなければならないことがらをいう。この課題を,それぞれの時期において解決していれば,社会生活への適応もでき,望ましい方向に発達すると考えられている。

ウ. 「実践活動」とは,児童生徒が自主的に考え,判断し,意欲をもって積極的に集団の目標を達成しようとする実践的態度に支えられた,ねばり強い集団の活動でなければならない。したがって,それぞれの児童生徒が同時に所属するそれぞれの集団において,学校生活上当面する切実な問題の解決を,すべての集団成員の共同の問題として,いつ,どこで,どのような方法で,だれがやるのかということを集団思考を通してたしかなものとさせ,そのきまりに従って実践させてゆくことである。

(注) 道徳教育における「実践」の意味は,ひとりひとりの児童生徒が,「規範や規則を忠実に守って行動すること」と「道徳的な価値を実現するための行動を身につけること」であり,特別活動のねらいとする実践とは異なるものである。

(2) 望ましい集団活動を育てるための条件

 特別活動の領域に属する諸集団は,学級集団をはじめ,クラブ集団,全校集団と種々の特質をもつ集団がある。そこでたいせつなことは,集団としての成熟をはかることと望ましい集団活動を活発にするということを,段階的な過程としてとらえるのではなく,集団活動を通して集団の成熟を促し,集団の成熟に応じて集団活動をより充実させるという相補的・発展的なとらえ方をしたうえで援助(励ます)・指導(育てる)をすることである。

 そのためには,集団成員の個人理解はもとより,それぞれの集団の理解についても配慮し,援助・指導の適時性と適切性をふまえて,援助・指導の効果を高めるようにすることかたいせつである。

(1) 望ましい集団活動を育てるための一般的条件

ア. 集団の目標を設定するための集団活動が,実質的に集団全員の参加のもとに行われ,その活動を通して集団成員の民主的な人間関係が育てられるようにす必要がある。

イ. 集団の目標が集団成員の望ましい発達を促すものであるとともに,その目標が成員に十分理解され受容されて,成員の行動の原動力となるようにさせる必要がある。

ウ. ひとつひとつの集団活動の目標(活動のための「共通事項)方法,役割について,集団成員


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