福島県教育センター所報ふくしま No.32(S52/1977.8) -032/033page
まとめ
前号から続いた県内公立小.中学校の現職教育研究主題の紹介が終るので,傾向や特徴的なことをとり出してまとめにしたい。
1. 全体的な傾向
次表は研究主題を領域ごとにまとめたものである。
領域\種別 小学校 中学校 教 科
(備考)
%は教科内の率75% 62% 国語 37% 学習意欲 21% 算数 31% 主体的 21% 理科 10% 自主的 10% 道 徳 5% 3% 特 活 6% 5% 生徒指導 1% 13% 全領域 (視聴覚含)13% 17% 全領域とした内容は,小学校では全般,視聴覚。中学校では全領域として紹介したものである。この中には,数育目標の具現または実践,教育課程の研究,学校経営,環境緑化などがふくまれており,授業にかかわるものもある。
教科を対象とする研究は,このようなことを考慮に入れると,小学校は80%,中学校は70%弱になり,県内の小中学校の研究は,教科を中心としたものであるといえる。
2. 小学校
国語,算数の研究が多い。県内全体からの割合いをみても,国語28%,算数23%で,県内の半数の学校が国語または算数(一部重複)を研究している現状である。国語では読む力,あるいは読解に関する研究が約半数をしめ,算数では考える力,思考力をとりあげている学校が多い。
理科では,科学的思考力や探究の過程に関する主題が多い。
1教科,1領域でも具体内容にしぼった研究が多く資料や文章表現からみると,視聴覚または教育機器との関連のうえで,指導法の改善を意図しているものがわりあいと多い。
3. 中学校
教科を対象とする研究が多いことは小学校と同傾向である。その内容を文章表現からみると,学習意欲,主体的な(に),自主的な(に),など学習態度にかかわるものが多い。中学校における教科共通の課題設定のむずかしさがあるとしても,学習意欲を問題にする根底には重要な意味があるものと考える。
(所報No.32, P.2, 1「学習について」参照)学習意欲(意欲),主体的,自主的の語句のある研究主題をとりあげて,全体と比較すると次のようになる。
・学習意欲に関するもの ……… 15%
・主体的な(に)関するもの …… 14%
・自主的な(に)に関するもの … 7%
これからみると中学校の1/3以上の学校は,生徒の態度的なことを含む課題を設定していることになる。
小学校との比較では1の表で見られるとおり,生徒指導に関する主題が多い。現在の中学校のかかえている現実的な問題,または学校の目標具現との関連から主題として設定されたものか,趣旨は不明であるが特徴としてみることができよう。
4. その他
小学校では学習指導要領の改定,教育課程の内容等に関連する主題がみられる。例えば「地域の自然や文化を体験的に親しむ活動」に代表されるもの,「ゆとり」と「充実」,「生き生き」と「ゆたかさ」の表現にかかわる具体内容とその実践に関する研究がある。
学校の教育目標の具現方策,学校経営,学年経営,学級経営のあり方,またはこのことにかかわる課題を設定している学校があり,研究主題についての付記等からみると「評価」を中心にした研究とも考えられる。
評価をはっきりと表面に出した研究主題も各管内にみられるが,サブテーマや報告の付記によると「自己たしかめ」「学習過程」の評価,さらに「形成的評価」の表現もみられ「評価」を問題にしていることがうかがえる。
研究をすすめるにあたって,ぜひ長谷川寿郎先生の「学習指導と教材研究」を熟読していただきたい。自分たちの研究の見なおしの必要や,支えになる理論がみつかることと思う。