福島県教育センター所報ふくしま No.34(S52/1977.12) -004/026page
る。 2) 上の実験で,トライアングルのかわりに,スプーンなどの金属を用いてもよい。また1人だけでなく数人で同時に聞くようにしてもよい。 3) 糸や針金は,離れたところへも音を伝えることを確かめる。 スタンドなどにつり下げたトライアングルに,5〜6m(もっと長くともよい)の糸や針金を結び,他端を1)のように指にまきつける。 トライアングルをたたいてもらい,指を耳にあててその音を聞く。 また,教科書に示されているように,セロハンテープで下敷などに糸をはりつけて音を聞いてもよい。 4) 糸に軽く指をふれて糸が震えていることを確かめたり,糸をゆるめるか指でつまむかすると糸が震えなくなって音が伝わらなくなることを調べ,前時との関連から音が伝わるのは震えが伝わることであり,音の発生がその物の震えによることの理解を深めるようにする。 これらの実験を通して,発音体からの音を糸や針金がよく伝えること,糸や針金が発音体の震えを伝えること,すなわち音が物体の震えによって生じ,その震えが糸や針金を伝わるので遠くまで音を伝えることに気付かせることができる。 また,導入に扱ったゴム風船による糸電話は,ゴム風船が声の振動によって震えていることを感じとることができ,そこから音が,ゴム風船→糸→ゴム風船と伝わって聞こえることに気付き,次時の糸電話へと発展させることができる。 なお,びんと張った糸は,ひき伸ぱされるともとにもどろうとしてちぢむ弾性を持っため振動が伝わるが,糸がゆるんでいると,この弾性を持たないので振動は伝わらない。しかし,針金の場合は,金属自体の弾性のため音を弾性波として伝える。したがって,針金ではぴんと張っていなくとも音を伝えることができる。 5. 糸電話についての指導
糸などが音を伝えることから,話し声も糸を通して聞こえるのではないか,ということから糸電話に対する関心を持たせる。ここでは,糸に口を近づけて声を出してもその声の振動が糸にのらないため,いかにして声の振動を糸にのせるかがポイントになろう。
前時までの学習で,声による紙コップの震え,ゴム風船による糸電話の例などから,振動しやすい物に糸をつけれぱよいことに気付くだろう。
振動板となる紙は,ハトロン紙や硫酸紙,トレーシングペーバーなどのうすい紙のほかに,ケント紙のような厚い紙でもよく聞こえる。
また,糸のほかにエナメル線などの針金や紙テープなどを使った糸電話を用意しておくのもおもしろい。針金の糸電話では,針金がぴんと張っていなくとも声が聞こえる。
なお,余裕があれぱ児童の作った糸電話と比較させるために, ガラスコップ(または空かん)どうしを糸でつないだもの ガラスコップ(または空かん)と紙コップ(または児童が作ったと同じ電話器)を糸でつないだもの などを用意しておき,これらの糸電話がなぜ声を伝えないかを考えさせるのも,音に対する理解を深めるのに役立つだろう。 6. おわりに
音の実体にせまるために,発音体の状態,音を伝える物と伝わり方を調べた上で,糸電話を通して音に対する理解を深めるという学習過程にもとづいた実験例などを考察してみた。この過程は,糸電話などの遊びを最初に扱い,遊びを通して自然科学的事実に気付かせていくという展開をとることもできる。この場合は, 糸電話を作って離れた人と話をしたりして遊ぶ。 糸電話が聞こえるわけを調べる。 声が聞こえるとき糸はどうなっているか。 糸電話の紙(振動板)はどうなっているか。 糸や紙を指でおさえたとき声は聞こえるか。
また糸をゆるめたらどうなるか。トライアングルなどの音も糸電話で聞こえるかどうか調べる。 音が聞こえるときの糸やトライアングルのようす トライアングルの震えを止めたとき 音が出ているものはすべて震えていることを確かめる。 などの指導過程が考えられる。 どの過程をとるにしても,触覚や視覚によってとらえた振動と,聴覚によってとらえた音との一致をはかることによって音の実体にせまり,将来エネルギーとして音を理解していくためのひとつのステップがこの学年のねらいでもあるわけである。 実験室での実験結果をもとにして述べたもので,教室での実態などまだ考慮しなけれぱならない点もあるが,他の文献などとともに参考にしていただけれぱさいわいである。 <参考文献> 小林実著 理科の実験と観察 (国土社) 新学習指導要領の解説と展開 (教育出版) 小学校低学年の理科指導 (埼玉県教育センター)