福島県教育センター所報ふくしま No.35(S53/1978.2) -022/026page

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路希望,健康状態など) 
○まとまり(集団作業態度,親和感,連帯感,所属感,問題児への対処など) 
○世論(他への賞讃と承認,他集団への関心,討議のようすなど) 
○成員性(中心活動者の指導性,被指導者のフォローアップ,役割分担のしかたなど) 
○組織性(凝集力,作業分担のしかた,特別な班(係)の有無など) ○集団間の関係(仲間集団のあり方など)

 このような視点から集団を理解するとともに,各種の検査(ゲスプーチスト,ソシオメトリックテストなど)・調査を活用して客観的な理解を得る必要がある。

《2》 個人を理解する。

○ ひとりひとりの個性を理解する。
 ひとりひとりの児童生徒の自己実現を図るた めには,児童生徒ひとりひとりの性格や個性を はっきりととらえられる理解でなければならな い。それぞれの心身の特徴や能力,「意志決定 (判断)」や「行動」の傾向を明確に理解しな ければならない。

○ ひとりひとりの問題を理解する。
 生活への意欲を高め,不適応条件を除き,自 己実現のよろこびを得させ,充実した有意義な 生活を送らせるためには,それぞれの集団の中 での問題と直接に関連するひとりひとりの興 味,要求,悩みなどを知り,それらをどのよう に態度や行動に表そうとしているのか,また, それらをとりまく集団についてもよく理解する 必要がある。

(2)自己実現を図るための「行動」の観察

 児童生徒を理解するためにもっともよい方法は,種 々の分野でそれぞれの児童生徒がどのように意志決定 (判断)をし「行動」しているかをありのままに観察 することがたいせつである。児童生徒の「行動」を見 つめてゆくことは,「人格は行動によって規定される」 という原理からみても,それぞれの自己実現を促すた めのきめ手になるといえよう。そこで,観察法の特徴 をあげると次のようなことをあげるることがきる。

○ 直接的である。 
○ ありのままの状態をとらえることができる。 
○ 問題行動の兆候を発見することができる。

《1》 条件を統制しないで行う観察(自然観察法)

  普通,観察法とよばれるのは,この方法である。 子どもの日常の状態において,ありのままの姿を観 察し,児童生徒を理解していこうとする方法であ り,それには次の方法がある。

ア,叙述的観察記録法

 児童生徒の「行動」をあらゆる場面で観察し, これを叙述的に記録する方法である。 
 この方法の特徴は
 ○ 問題をとらえるきっかけとなること。
 ○ 児童生徒の発達の記録となること。
 ○ 教師の反省の資料となること。 などをあげることができる。

 留意点としては,
 ○ 観察者の教育観,児童生徒観,感情などによ って観察をゆがめないようにすること。
 ○ 観察者の印象記にならないように,状況を正 確に記入すること。などがある。

イ,組織的観察法

 観察の客観性を高めるために,特殊のことがら を選択して(行動観察の項目の設定),計画にした がって観察していく方法で,この結果を記録し, 分析して児童生徒の理解に役立てるものである。
 この方法の特徴は,
 ○ 自然発生的に起ることを直接的にとらえられること。 
 ○ 合目的であり,観察者の主観を防ぐことができること。
などをあげることができる。

 留意点としては。 
 ○ 「行動」にかかわる観察することがらをはっきりときめること。
 ○ 児童生徒に気づかれないようにして,自然の状況において観察すること。
 ○ 組織的な計画をつくり,しんぼう強く観察を続けること。
 ○ 表現用語の統一や記録カードのくふうをすること。などがある。   
 ※ その他の方法もあるがここでは省略したい。

《2》 諸条件を統制して行なう観察(実験的観察法)

 この方法は,問題とすることがらを児童生徒の 自然の状態で起るのを待たないで,人為的に場面をつ くり,条件を統制して必要な刺激を与え,求める反 応を発生させる方法である。

 この方法は,比較的短い時間で多種・多数の観察 結果が得られ,純粋な状態が観察されるので都合がよい。

 また,「行動」の発生から終末までの過程をさま ざまな条件下で観察し,分析できるのが特徴であ る。前述した自然観察法では,表現された行動の内 面的な意味まではとらえられないという限界があっ たが,これを補うものであるとされている。

 留意点としては, 
 ○ 教育的に問題となる方法はとらないこと。  
 ○ 場面設定は一つの治療過程となることを考慮すること。 
 ○ 問題を小さくとらえること。などがある。

3.むすび

 どの児童生徒にとっても,学校生活は所属感や連 帯感に支えられた充実したものでなければならない。

 どんな集団にあっても,全力をつくして努力したという充実感と自分の役割を十分に果したという成功感をもたせることがたいせつである。

 児童生徒にとって自分の所属する集団でのあり方は,よろこびの基盤である。生きている児童生徒を本当の意味で生き生きとさせるために,それぞれの児童生徒の「自己実現」を促すための適切な援助(励ます)・指導(育てる)を効果的にすすめる努力をさらに続けたいものである。


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