福島県教育センター所報ふくしま No.35(S53/1978.2) -021/026page
<特別活動シリーズ No.5>
自己実現を図るための児童生徒の理解
― その基本となる考え方 ―
第1研修部 大 草 栄 治
1.集団の中での自己実現
特別活動の特質は,すでに述べたように「心身(人格)の調和的発達を図る」ことを主たる目標として,「集団活動」を基本的な方法としていることである。
特別活動の目標の達成をめざして,ひとりひとりの児童生徒を育てるという視点から,「集団活動」の教育的な意義について考えてみると,次のようにとらえることができる。
全校集団,学級集団,クラブ集団などのそれぞれの「集団」に属している「個」としてのひとりひとりが,集団活動に参加し,そこでの役割を果していくことによって,それぞれが相互に影響し合いながら,集団と集団活動の目標や課題を達成するために,せいいっぱい努力して,「自己実現*」を図っていくようにさせることである。
* 「自己実現」とは,自分自身の意志決定(判断)に従った行動を通して,対人関係を損うことなく,できるだけ十分に自分の能力を発揮し,自分自身のカで望ましい発達を遂げていくことである。
児童生徒が真に生き生きとして学校生活を送るためには,それぞれが属する集団の中にあって,効果的に自己実現を図ることがたいせつで,集団の中に埋没したり,集団の中での対人関係から孤立したり,集団の目標や課題達成に全くかかわり合いのないあり方をするようなことのないようにさせなければならない。
特別活動の領域には,三つの内容(児童生徒活動,学校行事,学級指導)があるが,それらには,それぞれ特別活動の目標を達成するための独自な目標がある。
したがって,三つの内容の授業の場において,それぞれ成立する「集団」と,その集団が主体となって実践する「集団活動」の目標や課題も,特別活動の目標や三つの内容の目標と深いかかわり合いを持つものでなければならない。
児童生徒活動では,児童生徒の自発的・自治的な活動を,学校行事では,学校生活に秩序と変化を与える活動を,学級指導では,好ましい人間関係を育てる活動を,それぞれ主たる目標としているが,これらの目標を達成するのにふさわしい「集団」や「集団活動」としなければならない。
このようにして,「集団」や「集団活動」の目標や課 題が,特別活動の目標や三つの内容の目標と深いかかわ りあいをもつものであれば,「集団」や「集団活動」の目 標と特別活動の授業を通して達成しようとする「個人」 についての目標(人格の調和的発達を図る)とは完全に 一致することになる。
このことは,「個」としてのひとりひとりの児童生徒が,単に,所属する「集団」へ適応するということだけではなく,「集団」の中で成員間に共通する目標や課題をとらえて,相互作用によって互いに影響し合いながら,創造するカを身につけていくことにもなる。
「集団活動」を通して,「集団」の中で,「集団」と ともに「自己実現」を図るためには,目標や課題を達成 するための「役割行動」を,「個」としてのひとりひと りの児童生徒に適切な児童生徒理解にもとづいて与えて ゆくことが,きわめて重要なこととなる。
2.自己実現を図るための児童生徒の理解
児童生徒理解ということは,「集団全体」を理解することと,「集団の中における個人」を理解するということの両面を考えなければならない。「集団活動」を通して,「集団」の中で,「集団」と ともに,「個」としてのひとりひとりの児童生徒の「自 己実現」を図るためには,上述したことは,欠くことの できない条件となる。
したがって,学校や学級という集団をよりよい方向に指導するための理解ということは,ひとりひとりを望ましい人間に育成していくための理解であり,適切な援助(励ます)・指導(育てる)をするための理解でなければならない。
(1)児童生徒の理解
《1》 集団を理解する。
特別活動の指導は,「集団活動」を通してとい う「集団場面」での指導である。したがって,集 団を理解することは,特別活動の指導をすすめる うえでどうしても必要なことである。
この場合,集団を理解することをよりよくするためには,その集団の成員である「個」としてのひとりひとりの児童生徒を理解する必要がある。
さらに,集団の構造や性格も理解する必要がある。
特別活動の領域において成立する諸集団(学級集団,クラブ集団など)は,それぞれ目標や課題が異なるので性格も異なるし,同じ個人でも所属する集団によって,その立場や役割も変わってくる。したがって,各個人の所属する集団の理解は,児童生徒の理解のたいせつな一面である。
<集団を理解するための資料>
○構成 (生育歴,居住地,保護者の職業,進