福島県教育センター所報ふくしま No.36(S53/1978.6) -013/034page
になる。逆に中心線より低くなれば,ひとりよがりの面があらわれ,放縦の傾向が強くなる。
2.五つの自我状態
エゴグラムにあらわされる「五つの自我状態」を簡単にあらわしてみると,図2のようになる。
図2 五つの自我状態また,これまでのべてきたことをもとに,五つの自我状態の性質をまとめてみよう。
(1)人は常に五つの自我状態の全体で反応する。たとえば,子供を育てる場合でも,子供に対する愛情(MP)以外に,時には子供をうるさく憎らしく思えたり(AC),将来,自分の面倒をみてもらおうといった打算(A)がからんだりしている。このように,あらゆる事態に対して,人は反応の程度の差が多少あっても,すべてから反応するものである。
(2)五つの自我状態は,ある程度相互否定的で,ある程度相互媒介的である。
五つの自我状態については,それぞれの特色をもっており,それらの相違(相亙否定的な面)をある程度見分けることができる。しかし,同時にそれらは,それぞれの働きに従って,互いに深く影響し合っている(相互媒介的な面)ことも忘れてはならない。
何かの調子で,どれかひとつに心の中のエネルギーが集中してくると,それまでの態度や行動が全く変わってしまい,性格のアンバランスをもたらし,他との調和をも乱してしまうことになることに注意したい。 3.事例
当教育センターで実施したエゴグラムから,親の自我状態と養育態度についてのべることにする。
図3の場合,父親はどちらかというと,子供や他の人との人間関係もうまくいっており,愛情も深く,合理的で,現実的な処理もでき,生き生きとして,自分のやりたいことをやりとげるタイプであるが,父親としての厳格さに若干欠けている。従って,母親の厳格性が高くなり,また,母親は,自分の枠組みが強く,世間の目も気になり,常にだれかにあたるか,自分を責めたりして,人間に喜びを感じることが少ないタイプである。
図3このような両親の養育態度から,子供は価値判断の基準をどのように求めたらよいか,とまどいを感じ,いろいろな間題行動をもつようになりやすい。(本事例の場合,子供ほ登校拒否症である)
図4図4の場合,どのような解釈を下せばよいか,ひとつ考えていただきたい。
(本事例の場合,子供は場面かん黙症である)
いずれにしても,「五つの自我状態」は,その人その人によって,ちがってあらわれてくるものであり,その中から,自分の姿をみつめ直すことによって,自分を知り,他人を知ることができよう。
表1 エゴグラム
氏名 生年月日 大正・昭和 年 月 目 性別 男 女
以下の質間に,はい(○),どちらともつかない(△),いいえ(×)のようにお答え下さい。ただし,できるだけ○か×で答えるようにして下さい。
F
P
1 子供や妻(または夫)が間違ったことをした時、すぐにとがめますか。 合計
( )
点
2 あなたは規則を守ることにきびしいほうですか。 3 最近の世の中は、子供を甘やかしすぎていると思いますか。 4 あなたは礼儀、作法にうるさいほうですか。 5 人の言葉をさえぎって、自分の考えを述べることがありますか。 6 責任感をつよく人に要求しますか。 7 小さな不正でも、うやむやにするのが嫌いですか。