福島県教育センター所報ふくしま No.36(S53/1978.6) -012/034page
教育相談
自分を知り、他人を知るための手がかり
━自我状態の分析(エゴグラム)━
教育相談部 横内直典
所報第33号、34号の「教育相談事例研究」の中に出てきた「ニゴグラム」の内容について,若干の解説を試みることにしたい。
この「エゴグラム」は,白分白身を知るための手がかりとなるひとつの方法としての,交流分析(トランザクショナル・アナリシス━Transactional Analysis=略称TA)の中に出てくるものである。TAは、精神分析の創始者として有名なフロイトの流れをくむアメリカの精神分析医工リック・バーン(1910-1970)によって開発された,新しい臨床心理約な分析のシステムであり,自分の性格上の問題点を,自己分析によって気づき,他人との人間関係を,白分でうまくコントロールできるように学習して行く方法である。
これは,従来の精紳分析とちがって,だれもが親しめる新しいすぐれた自己分析法であるといってもよいであろう。また,さらに,これによって幼児からの自分の性格形成上のなぞをさぐりあて,「本当の自分」を,生きる上での大切な手がかりとしてつかむことができるものでもある。
1.エゴグラム
私たちの心の中にある「五つの私=五つの自我状態」を知るために,表1のようなチエックリストによって,エゴグラムをかいてみることにしよう。(このチエックリストは,当教育育センクーに相談で来所された親に対して実施しているものであり,○印を2点,△印を1点,X印を0点として数量化し,グラフによって、プロフィールをあらわす)
図1 エゴグラムの例
(1)FP(父親的な自我状態;おいこら型)
中心線より高くなれぱなるほど,理想を求める・良心的・責任感・正義感・厳格・権威的などの特徴が強くな,極端に高いときは,自分にも他人にもきびしく,ときには,白分の主張を押しつけたり,批判的であったリ,また,相手の言い分もなかなか間けないことも多くみうけられる。
逆に中心線より低くなれば,非難・偏見・ルーズ・無節操になることが多い。
(2)MP(母親的な自我状態;よしよし型)
中心線よリ高い場合は母性的な・豊かさをあらわしている。思いやリ・'世話好き・同情・頼まれたら断れないなどの特徴が強くなり,極端に高くなれぱ,お節介で子供の自律性も奪ってしまい。知らない間に依頼心を植えつけてしまうことになりかねない。
逆に中心線よリ低くなれぱ,人に対して冷淡であったり・過保護・甘やかし・黙認の傾向が強くなる。
(3)A(大人の自我状態;てきぱき型)
中心線よリ高くなれぱ,理性的・合理的・能率的・冷静・率直・決断などの特徴が強くなり,物事をてきぱきと計画的にやリとけるが,極端に高くなると,冷静すぎるために無感動となり,人間的なあたたかみが感じられなくなってしまう。
逆に中心線よリ低くなれば,現実無視・自己中心主義・打算的な傾向が強くなる。
(4)FC(自由な子供の自我状態;生き生き型)
中心線よリ高くなれぱ,自発的・積極的・直感的・空想を好むなどの特徴が強く,天真らんまんで、喜怒哀楽の感情を素直に表現していく生活態度をとることになるが、極端に高くなると、衝動的・無責任といった面が強くあらわれることになるので注意が必要である。
(5)AC(順応した子供の自我状態;おどおど型)
中心線より高くなれば、順応・妥協・感情抑制などの特徴をもち、無理しても、相手の期待にそおうとして、自分が犠牲になることをいとわなかったり、他人の言うことが気になり、心配性で不安感をいだき、いわば「いい子」になろうとする気持ちが強く働くよう