福島県教育センター所報ふくしま No.40(S54/1979.2) -025/030page
アイデイア紹介
白ボール紙を利用した板紙凸版板画
会津高田町立高田小学校 玉川 岩雄
1. はじめに
妹が亡くなったとき,雪の中に埋もれている一つの石仏の姿を見ました。それは,疲れきった小さな子どもの寝顔でありました。
それから,わたしは「石仏とねぎぼうずの詩」の版画にとりつかれ,石仏とねぎぼうずを求めて歩きました。そんなとき,子どもが道ばたで,木ぎれをもってすじを入れたり,深く彫ったりして遊んでいる姿を見つけました。
「そうだ。」
木のかわりにニードルを持ち,土のかわりに白ボールを使って版画にしてみようとはじめたのが,わたしの白ボール版画なのです。(1) 版作りが多様である。
版を作ることについて考えてみると,白ボール紙は層にはがすことができるだけでなく,紙をひっかく,きずつける,しわを作る,穴をあける,切りとる,ちぎるなど……手や用具を白由に動かしながら,心の内部表現に適している。
(2) 大きな版を作ることができる。
樹脂加工紙は,特定の文房具店でしか市販していないが,白ボール紙は白由に安価で求められるので,量感のある版を作ることができる。
(3) 下絵が描きやすい。
下絵を描くときには,スケッチを原版に転写する方法もあるが,時間数を考え原版に直接描くようにしている。それでも,鉛筆で描きやすいため,構想をねりながらきめ細かな下絵を描くことができる。
3.白ボール紙版の表わし方
(1) 対象をとらえて下絵を描く。
白ボール紙に,自分の表してみたい人物や動物の動きを,ひとつのかたまりで表わせるように下絵を描く。この際,版面に傷をつけないように,柔らかい鉛筆(2B)を使って軽く描くようにする。
下絵がはっきりしないものには,細書きマジックで描きこむようにする。
(2) 下絵ができたら,形の周りをはぎ取って凹部を作る。
ニードル,カッター,切り出し,カミソリ導で,はぎとる部分の周りを切りこんでから紙層をはがすようにする。深くはがすと白がはっきりする。
この場合,形の周りの余分のところ(描画の場合,「バックをどの色ぬるんですか。」というところ)をはぎとると,灰色の中間調がフォルムを明確にし,主要な部分をはっきりさせることができる。
これらは,きりとり紙版,台紙つき紙版,木版などでも同じである。
それから,紙をはがすといっても簡単にはがれるものではなく,白ボール紙の材質を教え,向きを考えながら深くはがすようにしないと,美しい刷りとりができない。
(3) 主要な部分の深まりを追求する版作り。
「版を作る喜び」を大きくするために,カッター,切り出し,はさみ,二一ドル等の用具を豊富にし,はぐ,切り取る,切り抜く,線を人れる,点を集める等といろいろ表現をくふうさせ,楽しんで仕事ができるようにするとよい版ができる。
・切り取る―――――――白い面
・はく―――――――――中間色
・ひっかく―――――――白い線
・穴をあける,つっつく――白い面,点4. 美しい版の刷り取り
(1) インク(油性)
(2) インクののばし方
インクをインクの練り板に図のように出す。
ローラーはできるだけ軽く,小型のもの(巾15cm位)がよく,ローラーを空転させながら,前後,左右,それぞれ何回もころがし,ローラーにまんべんなく小さなつぶのインキがゆきわたるようにのばす。
(3) インクのつけ方
ローラーを軽く握って,手前に引くようにしながら原版に何度もころがしながら,はいだ部分にインクがつきすぎないようにつける。
(4) 刷り取る紙
奉書紙,画用紙,ケント紙,白ボール紙等……版の感じによって紙を考えるとよい。わたしは,ケント紙,白ボール紙を使うことが多い。
(5) プレス機の使用法