福島県教育センター所報ふくしま No.41(S54/1979.6) -017/038page
アイディア紹介
水泳指導にボール運動をとり入れて
いわき市立平第一小学校 武藤与史昭
1.はじめに
水泳指導でむずかしいのは,呼吸のさせ方,つま リタイミングであると思う。
すばらしくはやく泳ぐ子どもの中にも,息つぎが できないで苦しんでいる姿がみられる。発達段階を 考慮したとき,中学年の水泳指導で大事なことは, はやく泳ぐことではなく,息つぎを上手にできるよ うにさせることである。このような考え方に立って, 水泳学習が楽しい雰囲気の中でできるよう,ボール運 動をとり入れて研究推進を図った。
2.ボール使用はなぜよいか。
運動種目の中で,ポール運動の占める割合は大き く,児童にとっては日常的なものとなっている。そ れだけに,興味がある。その上,小学校中学年児童 のすぐれた条件の一つとして,身体支配をきわめて 容易にする時期であるということを挙げることがで きる。これらのことを考え合わせたとき,ポールコ ントロールすることは,楽しみながら個人の身体支 配を高めるチャンスに結びつくのである。
3.調整力を高めることになる。
水中におけるポール保持は,安定性を欠くために 常に平衡にもどそうとする感覚的な動きによって調 整力を養うことにつながる。このとき,
○ バランス
○ タイミング
○ 協応動作(手・足・呼吸)の三つの要素の,身 体支配カの相互作用がよくいくよう考えねばならな い。
調整力を高めるボール運動の処法 いっせい指導・班別指導に適用する(教育用ゴムボール4号)
内容
番号 要素
15分間のボール運動 1 直立の姿勢 ・ボールをもっての移動(リレー ・ボールをもっての浮き方・立ち方
・ボールをもっての投捕(とれる範囲までの移動)
2 変形の姿勢 ・ボールを両手・胸・ひざにかかえての動き ・ボールを両股にはさんでの移動
・あお向け,回転動作
3 高さに対する姿勢 ・とびこみ動作(ボールをかかえて) ・ボールを高く上げ,とびあがって入水
4 ものを運ぶ姿勢 ・ボールを使っての人はこび・数人 ・ひたいでボールをはこぶ
5 動きに対する姿勢 ・パス・ゴールシュートの練習 ・簡易水球
4.クロールの指導法について
−クロールの段階指導−
○ 初期のクロールの指導には,特に,呼吸,脚, 腕の運動のリズム化が必要である。初心者は,これ らの運動を無意識的に同時に行ってしまう。例えば, 手足の動きが充分にできないうちに呼吸の練習をは じめると,緊張性頸反射がおきてしまい,息を吸う 側と反対側の腕をひどく曲げて水に入れた泳ぎにな ってしまうので,手足の運動を完全に反射化される まで練習した方が良い。
○ クロール泳法に必要な段階
(1) はじめに入水指導を徹底させる。
(2) 体をうかし進むことができたなら,ビート板, ポール等を用いて,バタ足を正確にさせること。
(3) バタ足をする際,自分のプレスする肩に目じる しのテープをはり,プレスするときにはそれを見な がら行わせる。
(4) 腕,呼吸のタイミングを合わせる。この段階で も,バタ足一面かぶり一呼吸法の順で行う。
(5) ポールを用いて呼吸法の指導をする。
○これらの段階の中で,ポールを基本の運動として取 り扱い,浮くことによって,水中での歩・走・投の動 きを作りだすことができ,泳げない児童でも意欲的 になり,楽しく学習できる結果となる。
指導段階と調整力要素との関係
項班目
ねらい
指導内容・順序
調整力要素番号
A 初心者指導の要素 ・初心者の心理的不安をできるだけとりのぞいて,スパイラルに判断して指導する ・浮く姿勢を自覚させる
・水中で目をあけさせる姿勢をつくる
1.入水指導(図解・トラペンアップの活用) 2.水に慣れる練習
○水中歩・走・水かけ・むかで競争
3.「いき」をはく,「いき」をすう練習
○鼻・口でのタイミングをおぼえさせる
4.水に沈む練習
○ブクブク口から空気を少しづつ出させる
5.体をうかす練習
○だるま浮き・ひらうき
6.呼吸の練習
○頭を横にして肩を見させる
○顔についた水をふかない
7.立ち方の練習
8.水中を進む練習
○ボールをもってバタ足の練習
○ビート板をもってバタ足の練習
9.二人組で一つのボールの練習
1・2・3・4
B 面かぶり ・呼吸のしやすい姿勢をつくる ※ねているときの姿勢・ブラインド
1.「けのび」・バタ足の練習・ボール使用 2.グライドの伸び・数をかぞえ・面かぶり
1・2・3・4 C 呼吸法 ・どんな状態のときでも体をコントロールできる動きやすい姿勢をつくる 1.ボールを使ってのバタ足・呼吸法の練習 2.ボールを手にふれないではこぶ練習
1・2・3・4・5