福島県教育センター所報ふくしま No.49(S55/1980.12) -031/034page
[2] 対称の中心の与え方を工夫する。
児童は,左の図のような位置に対称の中心があっても,右の図のように作図する者があった。
そこで,下の図のように,対称の中心が移動した場合,点対称な図形の位置も変わることを理解させようとした。
図形の辺の上に対称の中心があるときの書き方
(辺の上の対称の中心の位置の変わり方)
3.指導の反省
[1] 身近にある対称な図形を取り上げたことは,児童のその後の活動に影響を与えたようで,対 称な図形を,自分の家の家具や食器,衣料品などから見つけてきたり,教室の内部から対称な 形を見つけようと見渡したり,自分で考えた対称な図形をノートする者もいた。
[2] 同形の2枚の紙や同模様のTPを操作させたことは,同じ2枚でもその組み合わせ方によっ ては対称性が変わることを強く意識づけることができた。
[3] 試行錯誤したり発見したりする授業における小集団による話し合いでは,考えの不確かな者 から指名させるなど工夫したが,ひとりひとりの理解を助けただけでなく,お互いに指摘し合 ったりする厳しい態度,教え合ったり励まし合ったりする協力的な態度をも育てられた。
[4] 作図するとなると,作業の面だけを重視しがちになるが,作図する前に,具体物を180度回 転移動させたり,フリーハンドでおおよその位置を見当づけたりすることは,図形の要素の位 置関係や点対称な図形の性質が明らかになると同時に,作業前に位置づけるという計画的な態 度や洞察しようとする態度を養う点でよかったと思う。
[5] 図形の一辺上を対称の中心が移動する場合の作図を取り入れたことは,対称の中心の位置に よって,点対称な図形の位置も変わるということを意識づけることができた。特に,対称の中 心と同一辺上にあった頂点の位置の変化が明らかになり,作図においてゆがんだ図形が見られ なくなった。
また,児童は対称の中心を移動することに特に興味を示し,相互にノート等に自由に図形を 書き,対称の中心を移動させて点対称な図形を作図する問題を出し合う姿も見られた。中には 図形の辺上だけでなく,図形の内部や外部にまでも移動させて発展的に学習している者もあった。4.残された問題
点対称な図形を観察したり,性質を見つけたり,作図したりすることは,図形の見方・考え方を育てる上で大切なことである。更に,児童の見方・考え方を深めたり,拡げたりするために,
(1) 点対称な図形とそうでない図形を弁別させる過程の授業への位置づけ
(点対称な図形の性質を発見させた後に,その学習した内容を使って図形を弁別させること)(2) 児童の興味・関心を引き出す指導過程
・教材・教具の工夫
・教材・教具の提示の工夫
・発問の工夫(3) 授業で学んだことを授業後も生かす環境作り (4) 基本的な学習態度を身につけさせる学習訓練
などの問題点を少しでも改善していきたい。また,児童に確かな学力を身につけさせるため,授業の基盤となる学級経営の充実に今後も精進していきたいと思う。