福島県教育センター所報ふくしま No.50(S56/1981.2) -030/042page
ヨコに取ったチーム編成であるこのシステムがメンバーの自己関与感を刺激し,教職員のモラールを高める1つの刺激になったと考えられる。
[2] また,人間関係改善に関する手だてとして,リーダーの自覚と対応のあり方については,意識を高めるのみにとどまった。したがってこのことがモラールにどう影響したかは状況の把握が困難なために,その因果関係をとらえるまでにいたらなかった。今後の課題と思う。
[3] 更に,本研究はその性質等から,実態・問題点――それに対する対策――その効果という一連の関係において,対策―変容は一方が独立変数で他方が従属変数として結びつくものではなく,そこには複数の変数が存在することが考えられる。したがって,独立変数としての対策がはたして妥当であったかどうかが問題であると考えられる。 5.今後の問題点
前項でも明らかなように,本研究においては未解決の問題があまりにも多く,かつ困難な課題が山積している。即ち,
(1) 学校運営にプロジェクト・システムによる方法を試み一応の効果らしいものはみたものの,今後これを定着させていくなかで,よりいっそう確かなモラールとの因果関係と効果をさぐる必要がある。
(2) モラールのプラスの変容は,高野氏によれば高揚型への移行をはかるには,不満から満足への転換であるというが,問われなければならないのはむしろ満足の中味ではないかと思われる。そのためには校内における現職教育活動のあり方に問題があるように思う。
(3) モラールを人間関係領域からみたとき,それを大きく規制しているものは,職場内の組織的及び非組織的人間関係要素であるが,例えば,職場のふんい気などの非組織的なものが組織的教育活動上のモラールにどう影響するものなのか,(またその逆の場合も含めて)などの論理的・実証的な解明が必要ではないだろうか。
(4) また,組織上の人間関係は,立場上の上下関係のあり方とも深くかかわるものといえるが,その場合のリーダーのあり方の改善は,一個人のメンバーへの働きかけのみでは望みえないことであって,そのためにはリーダーの立場にある者の大部分が改善への志向性をもたなければならないが,その志向性をどのようにして作っていくか。
等をあげることができる。学校経営における教職員のモラールの課題の重要性は,今更いうまでもないことであるが教師集団の場合,個人の属性よりも,集団の構造と機能の態様つまりは学校経営のあり方いかんが決定的要因である。という日本社会教育学会の指摘は,この課題への1つの光明のようにも感じられる。
従来学校経営・組織論は,能率論の視点からの見方が強いように思われるが,人間の教育をその任とする学校・教師集団の場合特に人間論的視点からのいっそう厳しい問いかけがなされなければならないと思う。
―― 主な参考文献 ――
○ 国立教育研究所紀要 53集 「学校経営と教職員のモラール」 ○ 日本教育社会学会編 教育社会学研究 No.17「学校経営における人間関係」 ○ 高野桂一著 「学校経営現代化の方法」 明治図書 ○ 斎藤克著 「学校経営における発想の転換」 文教書院 ○ クリス・アージリス著 「組織とパーソナリティー」 伊吹・中村訳 日本能率協会 ○ H・A・サイモン著 「経営行動」 松田他訳 ダイヤモンド社 ○ アミタイ・エツィオニー著 「現代組織論」 渡瀬訳 至誠堂 ○ C・I・バーナード著 「経営者の役割」 山本他訳 ダイヤモンド社 ○ 南博著 「人間行動学」 岩波書店 ○ 高根正昭著 「創造の方法学」 講談社