福島県教育センター所報ふくしま No.51(S56/1981.6) -006/042page

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小学校教材

社会科における「観点別到達目標」設定の意義と手順

−小学校2年単元名「駅ではたらく人たち」を例に−

教科教育部  奥 河 敏 男 

1.はじめに

 従来から、指導目標の分析が盛んに進められてきていますが、ここ数年、「すぺての児童・生徒に、教科の目指す学力を確実に身につけさせる。」際の手がかりを得るために、指導目標を「観点別到達目標」として設定する実践が進められています。
 本年度より、小学校社会講座の演習として、「観点別目標分析のすすめ方」を実施していますが、ここでは、「観点別到達目標設定の意義」と、小学校2年の単元「駅ではたら<人たち」を例に、「観点別到達目標設定の手順」について具体的に述ぺてみます。

2.「観点別到達目標」説定の意義

 観点別到達目標とは、教科の目指す学カを知識、理解、技能、思考、関心、態度といった観点から分析的にとらえ、教材に即して、それぞれの観点で養う力(要素的学力)が身についたとき,児童・生徒は「どんな行動ができるのか、どんな間題をどう解決するのか、どんな質問にどう答えられるようになるのか、どんな態度の徴候を示すのか。」といった形にまで具体化した目標をさします。
 適切な指導や妥当な評価を進める際に、指導目標をこのようにとらえると、例えぱ、次のような点で効果がみられます。
・ 学校や学年、学級の実態に即し、どんな能カや態度の育成に重点をかけるか明らかにする。
・ 学習指導の前・途中・後において、指導した目標について到達状況をとらえ、一人ひとりに学習を成立させ、できるだけ伸ばす。
・ 一定期間指導した集団について、どの観点では指導が成功し、どの観点では成功していないかを知り、指導法や指導計画の改善を図る。
・ 教科の目指す学カを身につけるための児童・生徒の「主体的な学ぴとりの過程」を明らかにする。
 なお、児童・生徒の指導要録にも記載されている(図1)に示した社会科の四つの観点は、究極には「公民的資質の基礎」を構成することになりますが、一つ一つの観点に沿って育てる要素的学力は、個々に養われるのではな<、互いに密接にかかわり合って養われていきます。すなわち、児童・生徒が社会的事象を観察したり、資料によって確かめたり、また、気付いたことを言葉や作品、動作に表したり、あるいはグルーブで話し合ったりして、自分や自分たちの生活とのかかわりで社会的事象のもつ意味とらえる、という学習活動の過程で、養われていくものなのです。
 また、「社会的事象は、人間行為の相互作用によって生じるもので、普遍性や法則性を求めることが容易でない。」という社会科の教材の性質からして、指導目標を観点別到達目標に表す際には、次の点に留意する必要があります。
・ 一つ一つの観点は厳密に区分できるものではなく、例えぱ、知識・理解の場合は、主として「知識・理解」という意味にとらえます。
・ 特に、思考・判断や関心・態度は、厳密な到達目標を設定することは困難であり、幅をもった表現にならざるを得ません。

(図1)社会科の四つの観点とその相互関係


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