福島県教育センター所報ふくしま No.51(S56/1981.6) -008/042page

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3.「観点別到達目標」設定の手順

(1) まず、学年の目標と内容について、学習指導要領及び指導書を正しく読み取り、併せて指導要録付属資料「観点別学習状況評価のための参考資料」を手がかりに、学年の観点別到達目標を設定します。
 (図2)の1(四角囲み)は、指導書の第2学年の「目標及び内容」(21〜26頁)、「社会的事象の観察と表現」(66〜68頁)、「地図の活用」(76頁)を読んで、そのおおよそを、「四つの観点で、どのような力を養うか。」の視点でまとめたものです。
 指導書を読み取る際には、表現用語に気を付けるとともに、黙読だけではなく、1(四角囲み)のように書き出してみると、より鮮明にとらえることができ、あとの分析を進める際に役立ちます。
 (図2)の3(四角囲み)は、第2学年の観点別到達目標の一部を挙げたものです。各観点の、特に思考・判断、関心態度の到達程度を設定する際に、有カな手がかりとなるのは、2(四角囲み)の「観点別学習状況評価のための参考資料」です。
 このように、学年段階の観点別到達目標を設定するのには、時間がかかりますが、やや包括的な表現とはいえ、観点ごとに到達の程度を明確におくことによって、次の単元段階での観点別到達目標の設定が、比較的スムーズに行われることになります。
(2) 次に、単元の教材のしくみを明らかにし、具体的な教材に即して、単元の観点別到達目標を設定します。
 単元の教材のしくみを明らかにするためには、「中心観念(この教材の中心となる考え方)はなにか。基本要素(基本となっていることがら)はなにか。具体要素(具体的な学習事項)はなにか。」をしっかりおさえ、それらの関係を吟味することが必要になります。
 中心観念は教材の核ともいうぺきもので、単元内容のもつねらいが、これにあたります。基本要素は教材の中心観念を支え、教材を構成しているものです。
 これらの中心観念、基本要素は、指導書を忠実に読み取ることによって、明らかにできます。例えば、単元「駅ではたらく人たち」の中心観念、基本要素は、学習指導要領の内容(4)「乗り物で働く人々は乗り物の出発や………。」に関する指導書の部分(25頁)を忠実に表した(図2)の4(四角囲み)の、太黒線で囲んだ部分から、読み取ることができます。
 具体要素は、基本要素をさらに具体的におろした要素であって、教科書等を分析することによってつかむことができますが、いずれにせよ、児童・生徒にとって、身近で、具体的なものであり、さらには中心観念を深く宿している学習事項であることが必要です。
 児童・生徒がゆとりをもって、社会的事象の意味を、自分たちの生活とのかかわりで探究し、四つの観点からなる社会科の学力を身につけていくようにするためには、中心観念←→基本要素←→具体要素の吟味の時点で、十分な、教材精選をしておくことが必要です。
 (図2)の5(四角囲み)は単元「駅ではたらく人たち」の教材のしくみを表したものです。これを、学年の観点別到達目標に照らして具体的な行動の言葉で表したものが、(図2)の6(四角囲み)の、単元「駅ではたらく人たち」の観点別到達目標です。
 ここで留意したいことは、「知識・理解」については教材の内容としくみから容易に表すことができるが、その他の観点については、学年の観点別到達目標から具体化しなければならない、ということです
 つまり、以上述べたように、「観点別到達目標」を設定する手順のなかで、学年段階の「観点別到達目標」が、かなり大きな比重を占めると言えます。

4.おわりに

 一般に、目標分析は煩雑になりがちで敬遠される傾向がみられますが、しかし、一人ひとりの児童・生徒に基本的な学力を身につけたいと思うとき、より適切な指導と妥当な評価の出発点となる「観点別到達目標」の設定は、大切な教材研究と言えます。
 そこで、より簡便な手法をと思い、述べてきましたが、「観点別到達目標」を設定する際に、参考にしていただければ幸いです。

参考文献
 ○ 小学校指導書 社会編 文部省
 ○ 社会科行動目標の分析と評価 坂本昂編 明治図書
 ○ 到達度評価のすすめ方 橋本重治著 図書文化
 ○ 新版学習指導の手引 福島県教育庁義務教育課


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