福島県教育センター所報ふくしま No.57(S57/1982.8) -016/038page
研究報告
社会的思考力を高めるためのノート指導
桑折町立醸芳小学校教諭 古内 利勝
1 研究の趣旨
(1) 研究の動機とねらい
「書く」ことの学習は,子どもが,自分の考えを深めていく上で必要であるばかりでなく,「話し合い」を進めていく上で欠くことのできない機能を持っているが,社会科の学習にどう生かしていったらよいのか,確たるものを持ち得ないまま,今日まできてしまった。
以前,ノート指導をとおして,社会科における学習方法訓練のあり方にとり組んだことがあった。その結果,自主的な学習へのとり組みは見られるようになったものの,ノートづくりに時間がかかりすぎる。個々の学習は高まってきたが,集団思考の場で,ノートしたことが十分生かされていない,教師側からは,ノート点検に要する時間が十分とれない。能力差の広がりに対する配慮が十分なされなかった,などの問題が出てきた。しかし,これらの問題が解決されないまま中断してしまった。
「書く」という機能が,思考を高める上で有効なことは,今さら述べるまでもないが,子どもの実態として,表面的で,追求心が浅く,書くことをきらう子が多いことも事実である。しかし,果たしてこのまま子どもの実態としてよいものであろうか。教師側の責任を問題にしなくてはならないのではないだろうか,と最近強く感じるようになった。そこで再び,子どもたちにとって不可欠なノート,そのノートづくりの指導をとおして,社会科の学習の目標である思考力,判断力の育成にとり組んでみようと考えた。(2) 問題点
- 学力テストから
ア 平均 50.41 標準偏差 6.97 全国水準との差が認められず,ほぼ,全国水準なみの力を示している。(教研式 S56.6 実施)
イ 社会的事象のもつ意味をとらえたり,関連づけて解決したりする問題の正答率が低い。
ウ 用語の理解が十分でない。- 日頃の社会科の学習から
ア 授業中の発言は,他教科に比べて少なく一部の児童に限られている。
イ ノートは,板書事項を写すにとどまり,ノートを工夫して使っている児童はいない。
ウ 書くことに積極的でない児童が多い。(3) 原因
- 授業の中で,子どもたちがひとりで学習する学習の仕方を,もっと重視していかなければならないし,集団の中で発表され,討論される学習集団の育成に力を入れていかなければならないが,それらが十分でなかった。
- 知識の習得をあせるあまり,子ども自ら学ぶ態度の育成が十分でなかった。
- 自主的な学習を支えるものとしてのノート指導を十分に行ってこなかった。特に,ノートは,自分の考えがグループや学級の話し合いにどのように関連し,どのようにとり上げられ,そのことによって自分がどのように変わったかの記録であること,子どもたちのノートは,個性的でなければならないことを十分ふまえたい。したがって,ノート指導のポイントを 記録としての機能だけでなく,特に,思考力育成としての機能を重視していきたいと考え,この研究テ一マをとり上げた。
2 仮説
(1) 仮説のための理論
- 自主的な学習態度育成のためのノート指導
ア 何をノートさせるか,ノートする内容を明らかにする。
イ 考えたこと,調べたこと,わからないこと,覚えたいことを,どうノートするかの指導を十分にする。