福島県教育センター所報ふくしま No.63(S58/1983.10) -013/042page

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生徒指導

発達課題に即した生徒指導の一貫性


一小学校における「活動性」の育成一

経営研究部 松本 幸男

はじめに
 先に(所報61号)で学校段階における人格形成上の発達課題を「自立感」一「活動性」一「自発性」→「自己同一性」ととらえ,小学校低学年における「自立感」について論述したが,本号では小学校中学年以上の発達課題とされる「活動性」について述べることにする。

1.「活動性」とは
 「活動性」とは,子供自身が自らの意志のはたらきによって活動することであり,これは積極的な意欲−やる気−の基礎になるものであると、いわれている0 したがって,「他からやらされて動く」ということや「きめられたことをきめられたようにやる」ことは,「活動性」といえないとみなけわばならない。やる気のある子供を育てるには小学校時代が勝負といわれるように,この「活動性」を学校生活の内外を通してあらゆる場・機会をとらえて育てる配慮が大切である。

2.新教育課程と「活動性」のかかわり
 人間性豊かな人格を形成するための発達課題を小学校では,子供に「活動性」を育てることととらえる。そのためには,全ての学校教育活動を通して子供の「活動性」を専重した指導が展開されなければならない。そのためには,内容が「基礎的・基本的なもの」に精選されていて,子供自身の活動が保証される「ゆとり」がなくてはならない。新教育課程の「人間性豊かな児童生徒の育成」,「ゆとりと充実の学校生活の実現」,「基礎的・基本的内容の精選と個性能力の伸長」の三つのねらいは,このように人格形成上の発達課題「活動牲」と密接なかかわりをもっている。このように考えた時,生徒指導が新教育課程の展開に重要な機能を果たすことが明らかになり,新教育課程展開上の小・中・高の−貫牲も可能になるのである。

3.「活動性」を育てるために
 ここでは,紙面の関係上 各教科・特活の授業と「活動性」の育成とのかかわりについて述べる。

(1) 各教科の時間を通した「活動性」の高揚 学習に取り組む子供に「活動性」を助長するという点からいえば,教師の一方的な説明などに終始する授業は子供の活動性を阻害する典型といえよう。

 すなわち,学習への積極的な参加と生き生きとした「活動性」を促すためには.学習場面において子供同志, グループごとの話し合いとか,調べる,観察,実験,発表,制作といったように,子供が主体的に活動できる場を指導過程の中に意図的,計画的に位置づけることが大切である。子供はこのような学習過程を通して所属感や成就感を獲得し,同時に学習への興味や関心,意欲が高まり積極的に学習活動に参加しようとする態度も養わわるものであろう。

 このように,適切な指導と援助を受けながら自主的,主体的に学習する場と機会をもち,経験することによって“今日の勉強は楽しかった”次の時間も!というように,その意欲がやる気の動機づけとなりひいては子供自身の「活動性」につながるものである。

(2)特別活動を適した「活動性」の高揚
 特別活動は,子供の「活動性」を発揮させる大切な教育活動である。学級会活動における話し合い活動を例にするならば,学級の仕事の分担などを決める際に子供同志の話し合い活動が十分なされないで単に叩くじ引き”で決めたとか,教師の過多な発言によって決められたとすれば,ここには子供同志が,“みんなで決め”“みんなでやろう”とする積極的な「活動性」を期待することはむずかしく,やらせらわてやるという消極的な活動になりがちであろう。

 したがって,話し合い活動で大切なことは「何でも話せる,そして聞くことのできる雰囲気」の中で十分な話し合いを通して自発的,自治的な態度を育てることである。そして,自主的な実践活動につながる動機づけとしての指導助言が大切である。しかし・子供の「活動牲」を助長するあまり,自治的活動の範囲を守らせることを怠ってはならない。

おわりに
 生徒指導の究極のねらいは,児童生徒に「自己指導の能力」を育てることであり,自分や自分たちの行動のしかた,考え方について自分で考え自分で決定し,それを実行するという経験を通してその能力が育つものであり,ここにいう「活動性」はこのような意味からも大切な発達課題といえる。

参考文献〔生徒指導〕小・中・高の課題と指導の一貫性坂本昇一氏


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