福島県教育センター所報ふくしま No.63(S58/1983.10) -014/042page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 受講者の感想

中学校技術・家庭科講座を受講して

岩代町立新殿中学校教諭 菅野 善昌

 昨年,6月14日〜17日(前期)と7月21日〜24日(後期)の延ベ8日間にわたって中学校技術・家庭講座に参加する機会に恵まれた。

 わたくしが教育センターの主催する講座に参加するのは5度目であるが,今回の8日間にわたる研修は非常に充実したものであった。

 それは,教科の全領域にわたり,日頃授業をすすめる上で悩みの多かった内容について,新しい教材や実験の方法を製作や実習をとおして研修できたことである。さらに,学習指導上の諸問題などにおいては,教科指導のあるべき方向を示唆され,教料を担当する者として責任の重大さを再認識することができた。

 研修は,実験や製作に重点が置かれ,常に自からの手で確認しながらすすめるようになっている。 最初に実験や製作の留意点について説明を受けた後,設計から製作まで,限られた時間の中で計画し実践していくことになる。普段学校において指導の立場におかれていると,あまり疑問にも感じなかったことがたくさんでてくるものである。

 助言の先生方や所員の方々の適切な助言と,研修者相互の協力によって,試行錯誤を繰り返しながらお互いにがんばった。完成したときの喜びは何にもかえられないものであり,少しずつ太くなっていく自分にうれしさをかみしめたものである。

 この教科を担当する教師は,案外たやすく生徒に製作活動を行わせることが多い。しかし,生徒は製作活動の中で,われわれが感ずる以上に,様々な疑問をもったり,挫折したりする場面が多いことをこの研修をとおして,あらためて考えずにはいられなかった。

 また,「教師は,生徒が壁にぶつかったとき,不用意に手をかしすぎてはいないか。」という助言の先生方や所員の方々のことばは,なにか自分の胸を刺される思いがした。生徒に自から解決した喜びや完成の喜びを与え,主体的に学ぶカを育てるためには,教師の助言指導のありかたが非常に大事であることを,具体的な場面をとおして示してくださったことは,私にとって大きな収穫であった。

 実験や実習は,一つの教材に対して一日割り当てられ ゆとりある日程であった。

 午前中に製作に入ると,目に見えて完成に近づいていく自分の作品をながめながら,昼食の時間もそこそこに研修室にかけこみ,時間のたつのも忘れて製作に熱中する毎日であった。

 また.研修の合い間に,いろいろな教材教具を見たり,その作り方を教えていただく機会もあり,本当に有意義であった。

 一人一人の生徒に,しっかり学びとらせていくためには,教師自身が教材教具を工夫し,自からの手で製作し,活用していく姿勢の大切さを痛感した。

 教科指導上の諸問題にかかわる協議においては,研修に参加された先生方からの各学校の実態や指導上の問題点などが出され それらの意見の交換をとおして,明日からの授業をさらに充実させなければならないことを再確認するよい機会となった。

 生徒の学習意欲の低下,手や体の横能の未発達,心と体のアンバランス,それに非行など,現在の生徒たちの深刻な状況を考えあわせると,「わかる授業」,「楽しい授業」を行うことは口で言うはど簡単ではないと思う。

 しかし,生徒たちを取りまく状況が悪くなればなるはど,教師は,すじ道の通った考え方をしっかりもって,工夫をこらした教材や教具を準備し,強い意志をもって生徒の前に立たなければならないと思う。「こんな生徒たちでは.どうせ教えても無理だろう。」というような考えを少しでも持ったら, たちどころに授業はくずれてしまう。

 生徒をどのような人間に育てるのか,原点に立ち返って,毎日の授業をどのようにしなければならないのか,深く考え,授業についてもっともっと研究をしなけわばならないと思う。

 このような中で,今回の研修は,明日からの教材研究や授業に直結する内容であり,大変意義深いものであった。

 最後に,助言者や所員の方々をはじめ,8日間にわたり,楽しく,快適な生活を送らせていただいた宿舎や食堂のみなさんに感謝したい。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。