福島県教育センター所報ふくしま No.63(S58/1983.10) -019/042page
4 結果の考察
ア 習熟度に応じて到達目標をABC3段階に分けて指導したことが有効であったかについては事前・事後テストの結果及び有効度指数,把持率から一応評価できる水準に達していると思われる。問題4,8は不振で,求める点を(x,0),(x,y)として方程式をたてることに抵抗があった。
イ 検証前の授業と比べて学習意欲が高まったか,学力が向上したか。アンケート調査からともに85%の生徒はやろうとする意欲が高まったか,学力がついたと回答している。生徒中心の授業の進め方を生徒は望んでいる。この面での仮説の効果は無視できないものがあるようである。ウ 数学の学習に対する変容はどうであったか。家庭学習時間の増減を調査からみると,増加した,と回答したもの76%で変容があったと考えられる。しかし下位グループの方に変化なし,と回答している点,今後の問題点である。この検証授業12時間だけでは自主的学習の習慣化まではいかないようである。根気よく継続して指導する必要がある。
エ 形成的テストについては自己採点後,再学習の内容を説明し,特に正答率50%以下の生徒「点の座標」で5名,「直線」で7名に対し放課後,個別指導をした。数学不振者を出さないためにも,今後継続して実施しなければならない点である。(3) 結論
・ 単元の導入時に段階別問題一覧表を与え各生徒に目標を設定させた。このことは,全般的にみて今後の学習内容を把握し,自主的に自分の目標とする段階をよく意識して学習に 取り組み,その実現に努力している姿がみられ有効であった。
・ 問題練習の時間帯で自分で設定した段階別問題を学力差に応じて解答し,さらに,上位の問題に挑戦しようとする傾向がみられ 学習意欲の盛りあげに効果があった。
・ 形成的評価の効果については,自己採点の段階で自己評価ができ,補充学習にも積極的に参加する態度がみられ その結果が事後テスト,有効度指数にも表れていると考える。
しかし,補充的な個別指導の時間のとり方がむずかしく今後の問題点である。以上の各点から総合的にまとめると,この指導法は生徒のために有効であると考えてよい。5.反省と問題点 研究を進めるにあたり,事前の準備,文献研究の不足が事後になってわかることが再三あった。この経験を生かして検証を重ねることにより生徒を主体にした授業の指導法の確立につとめたい。
今後,この方法を各単元の学習についても実施する予定であり,各題材の到達目標に適する練習問題の作成と適切な形成的評価問題の作成を積み重ね研究していくことが今後に残された課題である。
(前任校 保原高校)参考文献
・教育研究法(小野寺 明男)
・教育研究入門(群馬県教育研究所連盟)
・数学科到達度評価細案(中原克己 他)
・研究報告書(福島県教育センター)
・習熱度別学習を進めるために (福島県教育センター)