福島県教育センター所報ふくしま No.67(S59/1984.8) -017/038page

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研究実践校紹介

人間性豊かな児童を育成する勤労体験的学習

いわき市立桶売小学校氏

1.はじめに

 本校は,いわき市平の北西,磐越東線川前駅より北方約8 Kmの阿武隈山地の内ふところにいだかれ,双葉郡川内村,田村郡小野町に隣接し,標高500mの地に,人口約1,100人,戸数250戸の山間僻地にある小規模校である。高冷地のため,農林業を中心とした牧畜・葉タバコなどの経営に従事しているが,近年は土木工事に従事する家庭も多くなってきている。また,社会的な変化,農業機械化等も進み,忙しい時期であっても児童生徒の労力をほとんど必要としない。このような中で育った児童生徒は,一般によく働くが,自分から主体的に物事を見,考えることに乏しいこと。少人数のため,刺激が少なく,人間関係がせまく固定し社会性に乏しいこと。そして,自ら学ぶ積極性や根気強さ,将来の進路についての自分の考えが希薄であることが,その特徴としてあげられる。
 そんな折,県教育委員会より昭和57・58年度の2ケ年にわたる「勤労体験的学習」の研究校指定を受けた。物質的に豊かな社会の出現と社会構造の複雑化から,働くことの意義,正しい勤労観,職業観そして,社会的連帯感,使命感が希薄である中で,勤労体験的学習の充実をはかることは,知識の習得に傾斜しがちな学校教育の中で調和のとれた児童生徒を育成するために大切なことであると考え研究に取り組んだわけである。

2.地区研究主題

  心身の調和のとれた児童生徒を育成する勤労体験的学習
     −正しい勤労観の育成をめざして−
 桶売小中学校ともに,学校の教育目標具現化の方向で,各々指導の重点を設定し,学校の教育活動全領域の中での勤労体験的学習の実践によって,学校生括に変化をもたせ,知・徳・体の調和のとれたしかも,正しい勤労観を身につけた人間性豊かな児童生徒の育成をめざし,地区主題を設定した。そしてこの地区主題をふまえ,小中学校が協同体制を取り,地城・学校の実態に即し,自校の教育目標の具現化の方向で計画を設定した。さらに教育の今日的課題に対応し,勤労体験的学習を教育課程の内外へ位置付けた研究を進めてきた。

3 研究計画

(1)研究副主題
「心情豊かな実践力のある児童の育成をめざす勤労体験的学習」
 地区研究主題を受け,本校における研究副主題を上記のように設定した。

(2)副主題設定の理由
1. 地域や児童の実態をふまえて設定した本校教育目標3「ねばり強くがんばる子ども」,努力目標3「進んで働く児童の育成」の具現化のため,教育活動全体を通して,勤労にかかわる体験的学習や勤労にかかわる学習についての研究を深め,実践化をめざす。
2. 地域の実情や本校児童のすがたから考え,体験的な学習の機会が少なくなってきていること。また,積極的に働こうとする意欲がうすれてきていることがあげられる。
3. 農業生産にかかわる学習では,生命体をはぐくみ育てる学習であるので,このような体験的学習をくり返し学習させていく過程で,やがて,人間社会の愛情や生命の尊重につながるものと考える。また,これらのことから,児童が自分の将来を考え,働くことについての積極的な態度,すなわち,進んで働くことの喜びを通し,正しい職業観,勤労観の素地を培うことができるであろう。
 このような3つの観点から副主題を設定した。

(3)副主題の受けとめ方
1. 心情豊かな児童とは
 児童の生活をとりまくあらゆる場面において,感受性を持ち主体的に取り組む中で,児童自らが気づき,身の回りのものへの愛情や思いやりの気持ち,動植物に対する思いやりの気持ち,さらには人間社会への愛情へと発展できる心の豊かさがもてる児童。
2. 実践力のある児童とは
 児童の心情の高まりや,学習によって学びとったことがらが,児童自らの行動にあらわれ自分たちの意志と判断によって問題の解決を図ることができる児童。

(4)研究の全体構想
 諸法規・基準等と地域・児童の実態をふまえて設定した教育目標の達成をはかるために,「心情豊かな実践力のある児童の育成」を指導の重点にあげ,


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