福島県教育センター所報ふくしま No.71(S60/1985.6) -019/038page

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研修者の感想

特別活動講座を受講して

一特別活動の本質にふれるー

いわき市立郷ケ丘小学校教諭 高橋公子

“日々新たなり”

「勘と経験にだけ頼ってはいけない。勉強しなさい。学ぶ姿勢のない人には,何も見えない。進歩がない。」と,老師が言っておられた。

この学ぶ姿勢が,日々を新たにし,教師の意識を変革していく原動力になっていくものと思われる。

特別活動講座要項が手元に送られてきて,日程・内容を見るにつれ受講できる喜びがあふれてきた。ぎっしりつまった内容の中に,文部省主任視学官青木孝頼先生。そして,前全国道徳・特別活動研究会長岡本孝司先生の講義が並んでいる。こんなに充実した研修に参加できる幸せ,自分だけで聞くのはもったいない。この講座に参加できない仲間にも是非聞かせてあげたいと思った。このように喜びと期待をもって参加した。

どの講義もすばらしく全部を紹介したいが,紙面の都合で2〜3にしぼってみた。

まず,青木先生の「人間形成と特別活動」の溝義では,「行余=公余,業余」という言葉が強く印象に残った。これは,本来の仕事の外に……をするという意味であるが,実際には,教科にのみ重点をおいて余力があれば,道徳・特別活動をしているという現状ではないだろうか。教科指導だけでは豊かな人間形成はできない。特別活動の中でも,特に児童活動は全国的に遅れている。その様子は.A−5%以下(5年以上実践を続けている学校),B−10%位,C−80%位(児童活動が児童活動として行われていない学校)である。

教育課程を大別すると,教師の意図的・計画的指導による,各教科・道徳・学校行事・学級指導と,児童の自発的・自治的な実践活動が中心となる児童活動(学級会・クラブ・委員会)に分けられる。後者の児童活動において,児童のやる自治的活動は,すぐ成果は望めないが,学年相応の活動は1年生でもできる。子供の自治的活動は,失敗することによって活発になっていくものであるから,もっと子供に任せて経験活動をさせるべきであることを強調し,教師の意識の変革が大切であると言っておられた。

次に,岡本先生は,「学級経営と特別活動」の講義で,すべての教育活動は,学級経営が基礎になる,と冒頭に語られ,学級経営の課題を中心に,教師はいかに児童の活動を援助してやるかについて解き明かしてくださった。

学級経営は,教師と児童の人間関係を基盤としている。すばらしい学級経営者になるには,よい教師になること。つまり教師の人間性が問われるいい先生であることが,今の学校教育にとって大事なことであり,その先生を中心に,支持的風土の中で人の言動を素直に受け入れ,互いに支持し合い,喜び合える学級でこそ,特別活動のねらいである「望ましい集団活動を通して………自主的,実践的な態度」が育っていくものと思われる。特別活動の本質をしっかりとらえ,まず教師自身が変わっていかなければならないとおっしゃっていた。また,学級会の助言は,「寒い夜霜の落つるが如くすべきである。」も,感動的な言葉だった。

そのほか,教育センターの先生方をはじめとする県内の先生方の講義。教育課程と特別活動・特別活動の現状と課題・特別活動の評価など,どの講義も,わたしたち現場の教師にとっては大切なものばかりであった。

長いはずの3泊4日は,瞬く間に過ぎていった。夜は,同室の先生方との情報や資料の交換などをして自己研修に努めたが,もう少し知りたいという考えも強く,特別講義があればとさえ思った。

そして,この講座中,教育センター内の先生方をはじめ,事務や食堂の方々の温かい心遣いを感じ,まさに特別活動を地でいく姿にまた感動した。

学校に戻り,自校の先生方や特別活動の学習サークルの先生方に,これらの講義の内容を伝達したり,中央で活躍しておられる先生方といっしょに研修する機会をもったりして,さらに研修を深めているこのごろである。


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