福島県教育センター所報ふくしま No.71(S60/1985.6) -018/038page
人間関係に問題があると思われるので,両者の関係改善が必要であると考えられる。
また,各項目いずれにも相談や話し合いを「あまり」,あるいは「全く」しないという回答があることは,児童生徒の指導に関する教師間の共通理解の不足や全教師による指導の推進に支障をきたす一因と思われるので,なお一層教師間の共通理解や協力態勢の見直しが必要と思われる。
3 今後の指導
これまで述べたいくつかの問題点に対し,今後の指導や対策として次のようなことが考えられる。
○ 個性に応じた指導の重視
児童生徒一人一人は,心身の発達だけでなく,生育歴や環境なども異なり,その個性は多様である。したがって, 画一的な指導にのみ偏ることなく,児童生徒一人一人の個性的な特質を的確に把握した上で,その個性に応じた指導を展開することが大切である。
例えば,授業を妨害・拒否する行動の背景や原因に個がどうかかわっているかについて教師はよく見極め,個の特質を十分ふまえた方法で行動を改めさせるような,きめ細かい指導が考えられる。
学習用具不携帯,私語やおしゃべり,故意の雑音や奇声などは,いずれも日常の生活習慣や基本的な行動様式が確実になっていないからで,児童生徒の個に応じて粘り強く指導する必要がある。
また,このような指導は時期を逃さず行うべきであるが,個性を無視した表面的な注意や単なる叱責だけにならないような配慮が望まれる。
○ 人間関係の改善
授業中,児童生徒が教師の説明や級友の発言をひやかしたり,教師の指示を受け入れない場合の原因としては,教師に対する好ききらいなどの感情による人間関係や友人関係のまずさ,指導に対する不満,学習上のつまずきや劣等感などが考えられる。もし人間関係が原因なら根気強く心のしこりを解きほぐし両者の関係改善を図る必要がある。
特に,児童生徒の個性を重んじた人間的な温い触れ合いを通して,その心情を汲み取っていけば,教師に対する強い信頼や望ましい人間関係が生れ,授業態度によい影響を与えることになる。
また,授業に限らず他の機会にも児童生徒一人一人に注目し,声をかける細かい心配りをし,親しみのある人間関係を育てておけば,学習や生活に問題のある児童生徒も自ら来談すると思われる。
○ 学業不適応の早期発見,早期指導
学校生活や学業に対する不適応が端的に現れるのは,出欠状況のほか,授業中の態度や保健室での休養などを通してである。不適応は,次の問題行動へ走る兆候と考えられるので,気付いたら直ちに指導する必要がある。
保健室での頻繁な休養は,身体的な障害よりも内面的な問題による場合が少くない。このような場合,養護教諭は看護的態度やきめ細かい心配りで児童生徒に接し,心の動きや悩みを早期に察知できる場合が多い。担任は養護教諭と協力し合って,早期に指導や援助をしなければならない。
無気力でぼんやりしている児童生徒は,低学力,目標喪失,ゆがんだ人間関係などが原因と思われるので,個別的な学業相談を通し,動機付けをはかったり,目標を持たせるなどが必要である。
○ 教師の共通理解と協力態勢の確立
前節で,教師の共通理解や協力態勢について,不十分な面がうかがわれた。
しかし,生徒指導の推進にあたって,全員が一体となり,感じたことを素直に話し合えるふん囲気や人間関係は,生徒指導態勢の確立とともに共通理解を深めるうえで必要不可欠の条件である。
4 おわりに
生徒指導は短期間に成果が上るものではなく,教師の根気強い指導と協力から生れる。
教師は,このことを忘れず,平素から相互交流と共通理解を深めて望ましい人間関係を築き,教師全員が協力して推進する生徒指導を目指したいものである。