福島県教育センター所報ふくしま No.77(S61/1986.8) -009/038page
5.レーザーを用いた通信実験の応用
―高校物理―
(1)変調入力端子の利用
変調入力端子のあるレーザー装置(使用したものHe−Neガスレーザーλ=(6.328×10のマイナス4乗)mm,教材用)を用いて容易にできる。ラジオなどのイヤホーン端子からの出力を変調入力端子に直接入力すればよい。 光源を出たレーザー光は広がる(30mで直径3.5cm)が集光装置がなくてもよい。演示実験としては十分であるし,装置全体はなるべくシンプルな方がよいと思うからである。
受光装置としては,前述のように太陽電池やCdSが手軽である。CdSは応答速度は遅いが,光の感度は人間の可視領域とほぼ等しく,このレーザーの場合音を明瞭に再生できる。フォトダイオードやフォトトランジスタは,応答速度は速いが,最高感度の波長が8000A 前後かそれより長い赤外領域のものが多いので,この程度の演示では,太陽電池かCdSで間に合う。
通信距離は前述の太陽電池で30mでもまだ明瞭に受信できる。鏡を用いて反射させたレーザー光でもよい。
(2)回折格子を用いた回折・干渉縞の強度
1 強度を音で聞く
使用した回折格子は50本/mmのものであり低周波発振器の周波数は1000Hz程度で使用した。太陽電池は,回折した光点を受光するので,幅2mmのスリットをあけた厚紙をかぶせて遮光した。n=0〜2の3個までは,強度の違いを音の大きさとして聞き分けることができる。
2 強度をオシロスコープで見る
レーザーを回折格子に当て,直径5mm程度の穴のあいた厚紙で覆った太陽電池で受光し太陽電池からオシロスコープに接続する。厳密ではないが発生した電圧が光の強さに比例するとした。測定例では第0次120mV,第1次25mV,第3次8mVなど光の強さの相対値がわかる。
なお,このような例をパソコンのシミュレーショによって示すこともできる。もちろん 1,2のように実際の現象を見せることが先決である。ただパソコンの場合は,スリットの数や間隔,波長などの条件を変えることが容易である。
下の図は,波長がスリット幅およびスリット間隔の1/10の平面波が入射したときの回折・干渉縞の強度パターンである。
参考文献
・実験で学ぶ光ファイバ ウォルドT・ポイド著 啓学出版
・パソコン・グラフィクス物理 武者利光著 オーム社