福島県教育センター所報ふくしま No.78(S61/1986.10) -001/038page

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  巻 頭 言

本田氏写真

   見直しをせまられる学校の教育目標


  学校経営部長    本 田   孝





 学校経営は,わが校の教育目標を達成するために,人(Men),物(Materials),金(Money)のいわゆる3Mを整備し,わが校独自の組繊・運営(Management)を計画的,継続的に行い,目ざす子供像に近づけようとする,組織的活動であり統括作用である,といわれている。
 このような学校経営の指標となる教育目標は,「このような子供になってほしい」という”教師や親の願い,社会の要請”をもとにして,それに学校や地域の実態を十分に加味しながら,教職員の経営参加のもとに,学校として納得のいくものとして設定されなければならないと思う。
 ところで,本県の各学校では.教育目標をどう設定しているかを調査してみたので紹介したい。
これは,小学校50校を地区平均に無作為抽出して調べたものであるが,ほとんどの学校が,複数の目標をかかげている中で,1「よく考え工夫する子ども」とか,「よく考えて学習する子ども」など,“思考,工夫,学習,”に関するものが98%(49校),2「健康で明るい子ども」とか「体をきたえる子ども」など,“健康,体力,明るさ,”に関するものが80%(40校)3「仲よく力を合わせる」とか,「思いやりがあり礼儀正しい子ども」など,“思いやり.礼儀作法,助け合い”に関するものが64%(32校)4“勤労,実行,忍耐,”に関するものが52%(26校)5「きまりを守る子ども」とか「責任を果たす子ども」など“規則,責任”に関するものが7%(4校)となっている。
 現在の教育課程の基準改善の方針では,「自ら考え正しく判断する力」を持つ児童生徒を育成することを重視しているが,本県の調査結果を見て端的に気づくことは,方針の前半分にかかわる“自ら考える力”については,各学校とも教育目標を設定しているが,後半分の“正しい判断力”のもとになる,思いやり,礼儀作法,助け合い,勤労,実行,忍耐,規則,責任など,いわゆる「人間の心を育てる目標」が3,4では約2分の1,5ではほとんどの学校で設定されていないことに気づくのである。現在の児童生徒に,諸々の困った問題が生起している原因が,学校の教育目標の設定とかかわりがありそうに思えるのだが,考えすぎであろうか。

 今年度も秋を過ぎると,次年度の教育目標や努力事項検討の時期がやってくるが,教育目標を見直す視点として2つあげてみたい,1つは,中教審教育内容等小委審議経過報告(S.58.11)の4つの視点,つまり○自己教育力の育成,○基礎基本の徹底,○個性と創造性の伸張,○文化と伝統の尊重について,再度新鮮な目で検討してはどうか,2つめは,臨教審の「教育改革に関する第二次答申」である。主なるものとしては,○生徒指導の視点から,学校における“いじめ”問題への対心 ○青少年の健全育成のため,家庭,学校,地域の連携促進の必要性について述べてあるが,上記の「人間の心を育てる教育」をどうするかという観点から,学校や地域の実態とのかかわりを検討しながら,教育目標にどう取り込むかを考えねばならないであろう。
 それにつけても,教育目標設定のいろいろな条件について,児童生徒の人格形成の営みを結実させるため,ミクロな視点で.多面的に追求することをおこたりなく行い,”これこそ,わが校の教育目標”といえるものを,各学校で樹立するよう努力してほしいと願うものである。

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