福島県教育センター所報ふくしま No.78(S61/1986.10) -002/038page

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中学校教材研究(英語)

表現力を高める「かこみ教材」の活用

学習指導部    堀 川 利 夫



1.はじめに
 中学校の英語指導においては,表現力の育成が重視されている。しかし,学年が進むにつれ,生徒たちは,入学当時に抱いていた英語に対する憧憬ともいえる興味・関心がうすれ,表現活動が低調になるのが現状である。これは,学習内容の質が高まり,量が増大するなかで,言語の持つ伝達手段という機能を忘れ,知識の習得におわれてしまい,言語を学ぶ楽しさを味わえないためであると思われる。また実際に使用する機会がないため,英語は難しいもの,自分の生活には無関係なものと考えてしまうからであると思われる。このような現状を考える時,表現活動への興味・関心を生徒にもたせるためには.英語を表現する場を与え英語を身近なものに感じさせるとともに,表現できるという自信を与え,表現することの楽しさを味わわせる必要があると考える。
 このような条件を満たす教材のひとつとして,いわゆる「かこみ教材」があげられると思う。そこで,ここでは,「かこみ教材」の中の”Asking the Way”(3年12月・1月教材)の授業実践を例に,その取り扱いについて述べてみたい。

2.「かこみ教材」について
 New Horizon English Course Book2,Book3,には,“誕生パーティーで””図書館で”“電話で”“道案内”“買物”といった日常生活場面に密着した,いわゆる「かこみ教材」が5つ取り上げられている。これらは,「聞く・話す」力を育成するための素材を提供している教材であり,1 どのような場面で,誰に対して使用するのかという言語運用の適切さへの見通しが立てやすい。2 場面に応じた定型的表現を活用することで,ある程度内容伝達が可能である。3 既習事項を応用することで,発展的に扱うことが可能である。ということから,生徒にとって「聞く・話す」言語活動をしやすいものにしていると思われる。
 しかし,進度を気にするあまり,教科書にある対話文をただ繰り返し口頭で練習をさせることをもって「話させた」として,終わってしまうことがあるかもしれない。これでは本当に話していることにはならないと思う。生徒にとって言いたくもない事を覚えても「話した」という実感はないからである。そこで,生徒の英語学習によせる素朴な期待,すなわち,習ったものが使えるようになりたいという気持ちを呼び起こす指導が必要となる。

3.指導の実際
(1)授業実践にあたっての具体的な手だて
1 自分の住んでいる町に外人が釆て,道をきかれたことを想定し,今すぐ使えそうだという感じを与える場面を設定する。
2 この場面に使用される定型的表現を習得させ,その活用を工夫させる。
3 学習成果の定着と表現の喜びを感得させるため,発表の場を設定する。
4 1年,2年の教科書を利用させ,対話内容を厚みのあるものに工夫させる。
5 定型的な表現に慣れさせるため,聞く活動を多く取り上げる。

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