福島県教育センター所報ふくしま No.78(S61/1986.10) -013/038page
(4)援助の視点
対人関係の発達を促すことに視点をあててアプローチをしたい。
○親子関係の密着を図る。
○少数の友人との遊びをさせる。
○その後,集団との関係をもたせていく。
「バイクを窃盗した高校1年男子」の事例
(1)概要
小学校3年から学習成績が低下し,両親にテストの結果を隠すようになった。中学1年ごろから何事につけ,両親に反抗し,夜間外出や喫煙をするようになる。高校では,入学当初から学習意欲が低く,遅刻,早退,欠席が多くなった。登校しても頭痛や腹痛を理由に保健室で過ごすことがあり,また帰宅後は.中学時代からの仲間と夜遅くまで遊び帰宅は深夜に及ぶことが多かった。さらにバイク窃盗,シンナー吸引等で警察に補導された。
(2)資料
く乳幼児期>
○初孫として誕生する。
○養育のほとんどが祖父母。祖父母の権限大。
○非常に大事にされ,かわいがられる。
<小学校>
○3年の時,祖父母死亡,それ以後,養育は父母が中心となる。
○長男としての親の期待が大きく,学習の強制をする。結果のよくないテストを隠し,しっ責される。
○塾へ強制,家庭教師もつける。
○親の期待に対する不満と反発心,父母への不信が強くなる。
<中学校>
○親に反抗,不良交友へ走る。(喫煙,夜間外出)
○遅刻,早退,欠席の増加,学校への不信を強める。
○進学に対する意志は薄弱である。
<高等学校>
○父母や学校への不信。退学勧告を受ける。
○情緒不安定となり攻撃的な態度を示す。
○シンナー吸引.喫煙,バイク窃盗,夜間はいかい等不良交友が激しくなる。
(3)分析
<乳幼児期の問題点>
○自己中心性の脱皮が図れなかった。
○基本的生活習慣の形成がなされなかった。
<児童期の問題点>
○自分の実力を過信し,劣等感をもつようになってしまった。
○両親に対する不信から,父親をモデルとすることができず,男性性の未発達となった。
<青年期の問題点>
○自分自身を客観的に理解することが困難であり,安易に問題行動をもつ集団へのあこがれを大きくし,やがて参加してしまった。
(4)援助の視点
○自分自身をみつめさせることを主眼におき望ましい親子関係や友人関係のあり方を身につけさせる。
4.まとめ
子どもを正しく理解するには.子どもの「発達期の心理」についての一般的な内容と,その子ども特有の内容の二つをもとに理解することが重要である。
次号は「相談面接法」です。
<参考文献>
・児童心理学 三浦武・森重敏
・発達の心理 辰野千寿他
・目でみる教育心理学 西山啓
・児童心理学図説 山本多喜司
・精神発達と教育 続有恒