福島県教育センター所報ふくしま No.79(S61/1986.12) -016/038page
教育機器は,あるから,ただ使用すればよい,というものではない。どの教料で,どの単元の,どの小単元で,何時間目の授業の中のどの段階でどんな方法で使用すればよりいっそう効果的で効率的な結果を生み出すことができるか.系統的に位置づけていかなければ良い使用法とはいえないのである。そこには.教師のよりいっそうの工夫とアイディア,そして,地域や学校の実態.学級の実情と1人1人の子どもの学力の程度,能力も加味していかなければならない。これらのことがらは,他の教育機器使用の場合も同じことがいえるのである。機器の使い方が上手だから教育工学的手法ができるのではない。
福島県教育センター教育工学研修室
教育工学講座の「効果的なOHPの使い方」で授業の成果と子ども達の笑顔を頭に思いうかべながら熱心にTP製作に励む先生方。
3.教育工学に期待するところ
現代は技術革新の時代とか.情報化時代であるとか,また,21世紀をになう教育の推進とかいわれている中で.教育界が教育工学に期待するところが大きいとよくいわれている。そのような情勢の中で我々教師は進んでその期待に対応しなければならないと考える。
わが国の教育界は,その量.質においても世界的に上位にあるといわれている。しかし.学習の指導技術や学習方法で見るかぎり.制度的な整備や量的な増大に比較すると必ずしも満足できるものではないという反省がある。それらの点で,教育工学が,その欠点を補い,新しい道を開くことができるのではないかと期待されているのである。
教育に対して,教育心理学の果たす役割は大なるものがある。教育を行う上で提起されるさまざまな問題を心理学的に研究し,児童生徒の実態を的確にとらえ,心理学の理論や技術を十二分に駆使して合理的な教育方法を考えようとする中で,その欠点を補う方法.手段として教育工学的手法が使われだしたと考える。
教育には機械化できる分野がたくさんあり,学習をより的確に,早く,しかも興味をもたせながらより多くの効果を上げる工夫をしたり.集団学習の効率を高めたり1人1人の向上のあとを正確に記録して能力に応じた指導ができるようにしたりするなど.教育工学は学習の成立のために多くの成果を上げることができるのである。
4.おわりに
教育工学とは,けっして難しいものではないのである。授業を行う上で,よりいっそうの効率化と.1人1人の向上を目指すのに大いにその手法を駆使していただきたい。
それには,まず”食わず嫌い”をなくし,自主的に,また,意欲的に教育機器に取り組む教師自身の姿勢が必要であると思われる。授業の中で,直接的な経験は,児童生徒にとって確かに新鮮で興味のある目新しいものがあるかも知れない。しかし,直接的な経験ができない場合のことを考えると教育機器類に頼らざるを得なくなるし,また,その手法や手段を取り入れた方が,はるかに効率的に,確実に問題解決ができる場合が多いのではなかろうか,一つの機器を使うとき.計画を立て実行に移し.評価.反省を通しておのずとその良し悪しが判り次の効果的使用法が位置づけられると考える。
<参考文献>
・教育工学 教育心理編集委員会
・新教育用語事典 教育調査研究所
・県内教育機器利用調査 福島県教育センター