福島県教育センター所報ふくしま No.79(S61/1986.12) -019/038page

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研修者の感想

小学校国語講座に参加して

楢葉町立楢葉北小学校教諭  伊藤 雅裕


 「小学校国語講座」に参加させて頂いた者として,今,改めて3泊4日の研修生活を振り返り,その意義を問い直してみたい。
 内容面であるが非常に具体的で現場の授業に直結し役立つものが多かったということである。
 研究協議「国語科指導上の諸問題1」では,先生方が日々の実践の中で持っている教科指導上の問題点,悩み等の情報交換により国語科指導上の問題把握を行った。
 次に講義「文学的文章の教材研究の方法」では文学的文章における教材研究の方法,手順として登場人物の性格,心理のとらえ方,構成,主題の把握方法等について学んだ。
 さらに「民話の教材化」「福島の民話」の講義では,生の民話を聞くことができ,そのすばらしさ,教材としての価値,意義を問い直させられた。
 次に前時までの講義を生かした演習として,指導案作成,研究討議へと進み最後に「国語科指導上の諸問題2」では,「国語科指導上の諸問題1」で出された問題点の解決という流れで研修が進んだ。
 これらの内容を見てもわかるように問題把握→予想(手だて)→確かめ(指導案作成)→まとめと実に系統的に効率的に組まれた内容だなと感心させられた。
 上記の研修内容の中で一番,手ごたえがあり現場に直結したものと言えば「文学的文章の教材研究1・2(演習)」であったように思う。
 これは研修者がいくつかのグループに分かれ,その中で一つの教材をもとに価値分析を行い,指導案を作成し,できあがったものについて班毎の発表を行い比較検討,研究討議するものである。
 一人で指導案を作成するのと異なり,グループの中で先生方の討議により作成していくのでなかなか大変である。それぞれの先生方の教材観の相違によりなかなかまとまらない。
 各先生方の輪読に始まり,その教材の持つべき価値を出し合うことにより1枚の指導案に焦点化していくのだが,先生方の価値観のぶつかりあいがあり結論がなかなかでない。
 現場では指導書などを頼りに既成の教材観を参考に自分の教材観を折りまぜながら指導計画,展開案を立案していくことが多いが,ここではそれらのものが一切.与えられていない。原文だけを与えられるのでおのずから各自の教材解釈を出し合うことになり,本音のぶつかりあいという面がでてくる。一つの教材に対して,これほど様々なとらえ方があるものかと思い,改めて国語という教科の持つ難しさ深さを痛感させられた。
 ここで学んだことといえば,どの教科でも同じであるとは思うが,特に国語という教科においては.常日ごろの自己の人生観が知らず知らずのうちに現れるということであった。そういう意味でもできる限り原文に即しての解釈,発達段階の差もあるとは思うが忠実な読みとりの重要性を認識させられた。
 できる限り教師の教材観というものを子どもにおしつけることなく.多様な考えを引き出させる授業,算数などの教科と異なり答えが一つではなく多様性が許されるという面から考えてもすばらしい教科であることを再認識させられた。
 常日ごろ,どう教材研究をすすめていけばよいのか,現職教育における校内研修のすすめ方など悩んでいた私にとっては,すばらしい一コマであったように思う。本来の教材研究のあるべき姿を知らされたように思う。
 小学校における国語指導というと読み書きなどの指導に終始しがちだが,小学校の国語指導においても,文学教材を読み味わう楽しさ.すばらしさをとらえさせられるのだということを学んだ研修だったように思う。
 機会があれば,ぜひまた参加させて頂いて自己の教師生活を実り多きものにしたいと考えている。

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