福島県教育センター所報ふくしま No.80(S62/1987.2) -032/038page
(2)配線パネルを用いた電流回路装置
「電流回路」の単元は,実験を通して,一連の探究活動を展開させるのに最も適した教材である。しかし.電流の流れを目で確認できないこともあって.苦手意識を持つ生徒が多く,特に女子に見受けられる。そこで,電流回路が一見でわかり,不器用な生徒でも,容易に操作できる取り扱い便利な実験器具・装置を開発してみた。そして,3人グループ学習やペア学習でも主体的に進められるように.学習シートとともに,実験器具を質と量の面で整備した。
1 実験方法
ア 学習課題を選択し,実験計画を立てる。
イ 回路図を見て,器具を正しく配線する。
ウ 回路図で示した各点に相当する場所に,A〜Fまでの記号標示板を置く。
エ 電源装置の電圧を5ボルトぐらいにした時の電流と電圧を読み取る。
並列回路における電流・電圧の測定
オ 実験結果を実験レポートにまとめ,電流回路における規則性を発見する。
2 実験装置製作上の工夫
ア 各種の抵抗器の台に木ネジで足を出し,穴のあいている配線パネルに,差し込み固定できる。
イ AやBなどの記号標示板を置くことによって,どの点の電流を測定し,どの2点間の電圧を測定しているのかを,はっきり見分けることができる。
ウ 電流計・電圧計に接続している導線の片方をバナナチップに作り変えると端子の差し込み移動が簡単にできる。
各班が準備した器具エ 右の写真のように,みのむしクリップ付き導線の長さを3種類準備し,適切な導線を選ぶことによって,配線の混雑を防ぐことができる。
オ 抵抗値の異なる3種類の電熱線およびラジオ抵抗器をそれぞれ20個ずつ準備し,生徒の興味・関心や能力・適性に応じて抵抗器を選択できるようにする。
3 効 果
配線作業が,お互いの意見交換によって,スムーズに組み立てられるようになった。しかも,測定値の読み取りやデータからの規則性の発見が正確にできた。
ある生徒に,次のような成果が見られた。
3 おわりに
実際に,これらの教材・教具を使って,前者は自由進度による学習を,後者は,自分で学習課題を発見し,コース別課題解決順序を選択して進む学習を実践してきた。
生徒一人ひとりが,学習の厳しさと対面しながら,生き生きと活発に学習を進めている姿を見ると,教師の準備にかかる労力や苦労というものは吹き飛び,個別化教育の必要性が,尚一層痛感させられた。
今後の課題として,自ら学ぶ学習態度と創造的な能力を育てるために.教材の精選と構造化を一層図り,学習の個性化をめざした教材・教具の開発と授業研究に努めていきたい。