福島県教育センター所報ふくしま No.80(S62/1987.2) -031/038page
アイディア紹介 個に応じる学習をめざした教材・教具の開発
郡山市立郡山第二中学校教諭 佐々木 清
1 はじめに
生徒一人ひとりが,自ら意欲的に自然を調べ,「できた」という喜びと潤いのある学習を展開するには,学習の主体を生徒に据え,生徒の個人差に応じるような指導が必要であると考えている。
更に,今年度本校では,県の教育課程研究指定を受け,「望ましい学習集団形成を通して自己向上をはかる」というテーマで研究を進め,特に,小グループ学習の中で,自分の能力や特性を十分発揮させる研究を推進している。
その中で,生徒の既有経験などから,一人ひとりの能力や個性を把握し,個別化教育のできるような個別学習用シートや教材・教具の開発が,重要な役割を果たしている。
以下,個に応じる学習を実践してきた中で,「水溶液中の電流の流れ」と,「電流回路」で工夫した教材・教具を紹介したい。
2 実践例
(1)身近な素材を使った電気分解装置
水溶液中で電流が流れるのはなぜかという疑問から,イオンの導入を図るのに,塩化銅水溶液や塩化鉄水溶液の電気分解は,極めて重要な基礎的教材である。
自分のペースで問題を解決させるための時間を十分に与え,個別に実験が進められるように身近な素材を実験器具として生かし,実験効果を上げるように工夫した。
1 実験方法
ア 溝のついた2本の割ばしの間に,炭素棒を2本はさめる。
イ 塩化銅水溶液の入ったプラスチック容器に,炭素棒を入れる。
ウ 下の写真のように配線し,電流を流す。
塩化銅水溶液の電気分解
エ 炭菜棒の表面の変化やにおいを調べる。
オ ー極の炭素棒に付いたものは何という物質か,取り出して調べてみる。
2 実験装置製作上の工夫
ア 炭素棒は,廃棄された1.5ボルト用乾電池からペンチで引き抜いた。もちろん.アルカリ電池や水銀電池は除く。また.実験には,単二乾電池の炭素棒が最適の長さ,太さである。
イ 半透明のプラスチック容器は.給食のデザート容器の廃品であり,容易に回収できる。その上,比較的小型で,多量にしかも,水溶液の色の変化や炭素棒の表面の変化を観察するのに適している。
ウ 割ばしの両端が輪ゴムで留めてあるので,炭素棒の取りはずしが簡単である。
エ ア〜ウのように,電気分解装置は,日常の生活用品や廃品を利用しているので,生徒が一人ずつ使えるだけの数を安価で備えることができる。
オ 電源装置を乾電池に,また,電流計を豆電球に代用しても,実験可能である。
3 効 果
グループ実験でただ見ているだけの消極的な生徒や学力の低い生徒でも.「やればできる。」という学習への取り組みに熱意が見られ,更に,個別学習用シートに基づきながら,生徒一人ひとりが自分の手で積極的に実験を進め,自由進度による個別学習が可能になった。