福島県教育センター所報ふくしま No.82(S62/1987.8) -001/038page

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本田 孝

巻頭言

学校経営と日課表

次長(業務担当) 本田 孝



 教育目標の具現化を、学校における全教育活動の中で計画的に行うことについては、学校現場の共通の意識として高まり、その実践が着実に進められているが、その経営過程で重要な一面をになっているのが日課表であろう。その理由は、日課表は児童生徒の学校生活のための予定表であると同時に学校経営の立場からいえば、教育目標を達成するために行う教育活動プログラム運行の基礎であるからである。したがって日課表作成にあたっては、国の教育課程の趣旨を生かすことと、学校の教育目標具現化の計画実現をふまえ、学校の生活時程を、活動の主体者である児童生徒を中心にすえて、考えなければならないであろう。

 そして日課表には、1、毎日の時程の中に、児童生徒自身が計画し、活動し、評価するといった、いわゆる教育目標の達成を目ざしての、P・D・S・P'〜の過程実現への配慮があること。2 児童生徒の毎日の学校生活に、時間的なゆとりと、安定したリズムが保持されていること。が、最小条件として必要ではなかろうか、と考えるのである。

 具体的には1の場合、朝は教師と一諸になって、一日の生活の努力事項を、教育目標と関係づけて話し合い、帰りの時間には、実施したことの反省を話し合って指導する時間を毎日設定することであり、2の場合は、土曜日以外の毎日の時程をできるだけ同じにするとともに、活動ごとの時間帯にゆとりを持たせ、安定した気持ちを維持しながら一週間を過せるように、日課表を作成することである。

 ところでこのことについて、県内の小・中学校各30校ずつを無作為に抽出して学校要覧により日課表を検討した結果を述べると、月曜日は全校朝の会があるために、朝の学級の時間を設けていない学校は、小学校63%、中学校76%と多く、一週間を通して朝と帰りに必ず学級の時間を設けている学校は、わずかに小学校26%、中学校11%である。また、一日の時間帯の終始をチャイムで知らせると仮定して、一週間を通して2種類のチャイムで間に合うのが小学校36%、中学校7%であり、3種類以上のチャイムを必要とする学校が、小学校64%、中学校93%である。そしてこの中には、一週間になんと5種類の時程を持つ学校が含まれている。

 児童生徒は、このように複雑な時程でも、それが習慣化すれば、慣れてくると思われるが、だからその時程でよいということにはならないのである。

 さて次に、上記1、2を満足する小学校の例を紹介すると、この学校は一週間を通して学級朝の会と帰りの会を15分間設けるとともに、いわゆる"創意を生かした活動"を20分間ずつ、午前の同一時間帯に設け、その中に、学校の教育目標とのかかわりを考慮しながら、(月)全校集会、(火)体育活動、(水)美化活動、(木)発表活動、(金)自由活動、(土)週番引継、を計画しており、一週間を月〜金と、土の2種類のチャイムで運行している。

 調査校の中には、学級朝の会は10分間とっているが、帰りの会は5分にしている学校、学級朝の会はあるが、帰りの会のない日が2日ほどある学校、学級朝の会がなくて帰りの会だけある学校、などもあり、各学校の管理運営面でのいろいろな悩みが伝わってくるのを感じたが、基本的には、各学校の教育目標具現化への努力を、日課表に基づく児童生徒の活動にうまく噛み合わせる工夫は、ぜひ必要であると思う。そのための方策としては、各学校で実施している"創意を生かした活動"の時間の考え方とその日課表への位置づけがポイントになりそうな気がするが、どうであろうか


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