福島県教育センター所報ふくしま No.84(S62/1987.12) -001/038page

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岩城 教夫

巻頭言

よりよい人間関係を求めて

教育相談部長  岩城 教夫


 全国的に問題になった校内暴力やいじめが沈静化してくると、当時も見られていた登校拒否があらためて問題になっている。そこで、子供の問題行動を教育相談の窓口を通して考えてみたい。

 教育相談をしていて感じることは、人間関係のまずさが原因で問題行動になっているのではないかと思われる事例が比較的多いということである。親は一人として、自分の子供を悪くしようと考えて子供にかかわってはいない。一生懸命子育てをしている。いつの間にか歯車がずれ、ずれたことに気づかないでかかわっているうちに、かかわり方の結果が問題行動として表れるようになる。教育相談の相当の部分は子供と大人の歯車のずれを修正することにあてられている。

 そこで、歯車のずれが生じる要因を考えてみると、その一つに"思いこみ"がある。人間誰しも成長していく過程で自然に培われた考え方や価値観というものを持っており、それはそう簡単にくずれない。その結果、子供の考え方や感情などを“思いこみ"に基づいて受け取り、子供の本当の姿とずれがあっても大人は確信を持って自分に合わせて対応する。結局はずれが増幅することになる。子供は「どうしてわかってくれないの?」「わかってよ、わかってよ」と種々のサインを出すが聞き入れられず最終的に問題行動という形で強力に表現してしまう。ではその"思いこみ"をどのように点検したらよいのだろうか。それは、「自己への気づき」である。

母親

 この母親は何かおかしくはありませんか。そうです。言っている母親自身がやさしくしていませんね。この母親はこのような自分の姿に気づいていないのです。「気づき」には、自分のことは気づかない「今ここ」で起きていることに気づかないことが特徴です。「気づきがない」ことが結果的に子供との人間関係のずれにつながります。そこで、子供との人間関係改善のためご両親と相談していることは、
1.子供の話しをよく聴くこと。〜しながらでなく、目を見、うなずき真剣に聴くこと。その時の子供の気持ちになって聴く。
2.自分の考えをおしつけないで、一緒に相談する姿勢を示す。
3.あせらない。4.少しでも良いことがあったら認め、ほめる。

 以上のことは学校の先生方にもあてはまることで、常に自分自身をみつめ、ふりかえり、子供の身になって考えることが大切なことと思う。

 最近どこもかしこも研修会、講習会ばやり、それぞれ専門の方々がわかりやすく説明してくれる。多くの方々は同じ内容の事柄を数回聞いているかも知れない。しかし、一向に改善がはかられないところに問題がある。何故だろうか。今の子供たちと同じように間接経験ばかりで体験的な学習がないため身についていないのではないだろうか。家庭でも、学校でも今緊急にしなければならないことの一つに、聞き方、ほめ方、叱り方、気づきの訓練等の体験学習かもしれない。子供のためにも、更に自分自身のためにも。


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