福島県教育センター所報ふくしま No.84(S62/1987.12) -002/038page

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<所員個人研究>−小・中学校音楽−

指導と評価の一体化を目指す、主題構成による指導計画の作成

学習指導部  五十嵐 康雄

1.はじめに

 現在学習指導においては、指導と評価の一体化を目指す教育実践が望まれており、音楽科においても、指導と評価の一体化を図るための形成的評価のあり方を模索した実践研究が様々な角度から進められてきた。しかしながら、音楽科のように情意面が中心となる教科では、その特性から形成的評価がなじみにくかった点は否定できない。

 音楽科において形成的評価を取り入れようとすると、どうしても技能や知識面に目が向いてしまう。つまり、この知識・この技能が身につけば次のステッブに進む、など知識・技能の評価に偏り、情意面の評価が不足し、その結果、指導目標も達成されないといったような悪循環を繰り返すことも多くみられた。

 そこで、「指導と評価の一体化」を具体化することを目指し、形成的評価がうまく機能する指導計画のあり方を追究することにした。

2.授業改善のための形成的評価の必要性

(1)学習プログラムの評価

 人間の頭の働きは日常なれ親しんでいる特定の領域や、題材についてはよく働くけれども、他の領域や題材に対しては、同様の構造を持つものであったとしてもうまくいかないことが多い。

 音楽の学習の場面で、ハ長調が理解できたとしてもそのことが直ちにへ長調の理解につながらない。むしろハ長調を理解したことがへ長調を理解する妨げになることも起こり得る。したがって、同じ一つの目標であっても教師は、一人一人の生徒についてどのような具体例から入って、説明するのがよいのかを考慮しなければならない。このように、教師が実施しようとする学習プログラムが、一人一人の子に、適合するか否かを評価し、学習プログラムを修正し、次の指導計画に生かす実践の積み上げが大切なのである。

(2)形成的評価の結果とそのフィードバック

1.目標へのフィードバック
 形成的評価においては、目標が達成されたかどうかということについて確かめるが、成績不振の原因は、この目標の設定の仕方が不適当であることに起因する場合がある。例えば、学級全体の成績が低い場合、目標が高すぎたのではないか疑ってみる必要がある。

2.学習材へのフィードバック
 抽象的な説明では理解できなかった学習者がいくつかの実例を示されると、容易に理解できることが多い。学習者は千差万別であるので、学習者に即した丁寧な解説を付した学習材を用意することが大切である。

3.評価方法・用具へのフィードバック
 評価の結果、成績不振であった場合、その原因がその評価の方法や用具のあり方に起因していることが少なくない。評価方法は、行動目標として目標を設定した時点でほぼ定まっているのであるが、行動目標として客観的に測定観察できるような行動が正しく設定されているかどうかというと、考えられる行動は多数あって唯一絶対のものではない。まして、どのような条件下においてそれを行わせるか、どの程度の成就をもって可とするかということになると決定的な決め手はない。したがって、評価方法や評価用具は、教授者の経験と学習者の実態から学習過程の一段階としての一応この程度のことという、無理のないものを選定すべきである。

3.音楽科における題材の設定と達成目標

(1)題材設定についての考え方

 

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