福島県教育センター所報ふくしま No.84(S62/1987.12) -003/038page
音楽科における主題構成の指導計画は、"楽曲があるから歌う"という考え方よりも、"素材としての楽曲に内包されている教材性を目標達成のために活用していく"という考え方を持って立案することが大切である。つまり、計画段階から目標分析がち密になされ、指導計画、評価計画の作成、授業の実施、授業の改善という一連の過程を通して、常に達成目標が意識のうちに確認されているということが大切なのである。
(2) 具体目標の立て方
具体目標を表現、鑑賞、関心・態度の三つに分けて考察すると、
表現の能力に関する目標は、
…………歌うことができる
…………演奏することができるなどのように、必ず具体的な活動を伴うことが条件づけられており、教師はその活動を直接観察することによって習得の度合いを評価することが可能なものである。これらの具体的な目標は、具体目標であると同時に、達成目標と考えることができる。
鑑賞の能力に関する目標は、
…………感じ取ることができる
…………味わうことができるなどのように、………できるという言い方をしているものの、子どもの表情を介して、身体表現の動作を介して、など、何かが介在して感じ取ったか、味わっているかなどを判断することが多い。この点、表現活動を直接観察して行う前者との違いがあるといえる。
次に関心・態度の目標については、その性格上具体的な行動が、表現活動をしているときに、あるいは鑑賞学習をしているときの傾向性をとらえることが大切であり、副詞を加えた表記にすることが一般的である。例えば、
関心・態度に関する目標は、
…………進んで参加しようとしている。
…………注意ぶかく聴こうとしている。などであり、この関心・態度は、学習に対する興味や自信が背後にあって育てられるものであると同時に、教師との緊密なコミュニケーションが不可欠であるので指導者の側としては細かい気配りが求められるところである。
4.指導計画の具体例ここでは、中学校1学年の学年初めの主題を通して考察する。
(1)題材設定 中学生になって初めての音楽の授業である。この時期に歌うことの喜びを味わい、自己の表現力に対する自信を持たせることは、以後の音楽学習に対する姿勢を確立させるためにも特に大切である。そこでここでの主題は、新しい級友と心を合わせて、伸び伸びと歌唱する場面を多く設定するものでありたい。題材名
声をそろえて (2)題材の目標
2.具体目標
1.総括目標
全員が心を合わせ、声をそろえて表現する楽しさを味わわせる。
具体目標の重点は、題材設定の理由から、情意的な目標が優先されよう。したがって、ここでは「関心・態度」の目標に比重がかかる。
「関心・態度」
「表現(技能面)」
・級友全員での歌い合う楽しさを味わおうとする。
・積極的に表現しようとしている。
・級友の声にそろえようと努力している。
・二部合唱に熱心に取り組もうとしている。
・自己の声部の音域をすべて歌うことができる。
・正しい音程で歌うことができる。
「表現(認知面)」
(3)基礎・基本を定着させるための留意点
・楽譜を見て階名唱することができる。
・歌詞の内容を把握することができる。