福島県教育センター所報ふくしま No.84(S62/1987.12) -005/038page
基礎・基本のとらえかたとしては、いわゆる知識・技能における基礎・基本に加えて情意領域を含めた幅広い領域を想定することが必要である。
例えばなど学習活動においても以上のような幅広い基礎・基本を定着させるための手だてを講じなければならない。この主題での学習場面においても、これらの基礎・基本を体得させるような配慮が必要である。そのためには、
- 基礎的・基本的な知識・技能が身についている。
- 直感力や観察力が鋭い。
- 自分で目標を定め、計画を立て実行できる。
- いろいろな見方ができ、それに伴った表現の工夫ができる。
- ねばり強く工夫することができる。
- 感受性が豊かである。
- 相手の立場を考えて行動できる。
- 行動力や機敏性がある。
ア 詩や楽譜を板書や大きな紙などで分かりやすく表示し、学習の目標や中心になる学習内容を把握させる。
などのように子どもの工夫を吸い上げていくような授業形態と、いったん目標が確立されたら、その目標に向かってねばり強く立ち向かうような学習訓練を的確に組み込むなど、学習への興味が関心・態度に高まり結果的に基礎・基本が身につくような学習活動を設定することが大切である。
イ めあての確認や自己評価、相互評価のための各種学習カードの工夫と活用を図る。
ウ 楽譜に自分のイメージを書き込ませる。(目標意識を確認させる。)
エ イメージ曲線を作り自分なりの曲の設計させる。(自分なりの目的意識を確立させる。)
オ グループごとに検討させる。(プリントによるフレーズ作りやその検討をグループで行い発表させるなどの学習場面を組み込む。)
カ グループでまとめた表現方法を発表する場を設定する。以上の検討を行い、次の題材、教材で学習プログラムに対する評価の視点を具体的に掲げた〔表1〕のような指導と評価の計画として指導計画を立案してみた。
題材名 教材名(曲名) 声をそろえて ○きらら輝け
○エーデルワイス
・キャンプの夜*参考選択曲(・友情の歌) 6.おわりに
音楽科の目標は、情意面を特に重視しているのであるが、これを具現化するには教師のたゆまぬ自己研さんと教材研究が非常に大切である。しかしながらそれにもまして重要なことは、いかにすれば児童生徒と教師との人間的なコミュニケーションを保ち、人間としての基礎・基本を定着させ、自己教育力を身に付けさせるかという情意面の配慮であろう。そのためには児童生徒の実態把握を初めとし、形成的評価を行う中で常に学習プログラムの再検討を行えるような教師側の綿密な評価機能の生かし方が必要であると言えよう。
言い換えれば、授業を設計する上で情意的な面の視野を広げ「人間味あふれた授業のあり方はどうあるべきか」との問いを常に持ち続けることが大切である。そしてこの視点に立って地域性や学校の目標に沿った具体的な学習システムを開発することが望まれていると考える。参考資料
※「小学校教育評価全集 No.6 音楽」 大和淳二他編著 ぎょうせい
※「基礎・基本を考える」 奥田真丈氏 初等教育資料 通巻488号
※「学習意欲を高める教育評価」 山下剛氏 教育展望 通巻345号
※「学習指導と評価―『関心・態度』の評価に関する研究〔II〕―」 福島県教育センター研究紀要65号