福島県教育センター所報ふくしま No.84(S62/1987.12) -032/038page

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3.結果の考察と今後の課題
 研究実践の効果を調べるために、事後調査(評定尺度I・II)を行った。 評定尺度I、IIの事前調査結果と事後調査結果

(1) 全体からの考察

 全体の平均では、I・IIとも、向上がみられる。特に、生徒の自己評価は向上の程度が高く、陥没要素としてとりあげたD、F、G、Hはすべて向上している。中でもD(学習への喜びや満足感)、F(問題解決へのすじ道や方法を考える)の向上率は大きい。また、教師観察評価では、変容がなかったとしたK(他と共に向上)は、陥没要素としてはとりあげなかったが、生徒の自己評価からはかなりの向上が認められた。このことは、今回の学習が小グループによる課題学習であり、お互いの協力が必要であったこと、学習テーマも生徒の興味・関心のあるものの中から生徒自身が選び、生徒自身の手で計画・実行されたことなどによるものと考えられる。

個に対する考察

 図中、15番、19番、35番の生徒は、エンジンの性能を調べたグループで、大変意欲的に取り組んでいた。内容的に高度であるため、他の教師にもお願いした。このグループは、最後のまとめまで理想的な形で進んで行った。これらのことは、プラスの変容として各評価に大きくあらわれている。また、2番、11番、21番の生徒は、普段の状況から考えると、事前調査での自己評価は厳しくとらえていたように思われる。今回の活動では、自転車の加速度を調べるグループに加わり、ほとんどの作業を自分達で行い、まとめていた。以上の6人の生徒について共通に言えることは、自主的に学習に取り組み、楽しみながら作業を進めていたことである。そしてこのことが、結果的に、自己教育力といった、現在最も必要とされる資質の向上へとつながっていることである。

(3) 今後の課題

 自己教育力の育成に焦点を置いた「工業数理」の授業では、「数理的解法を用いて実際的に処理する」といった科目の性格も手伝って、結果的には生徒の主体的学習活動が行えるように展開して行った。しかし、この裏には次のような問題点もみられる。それは、基礎学力の乏しい生徒は、今回のような課題研究活動にはどうしても受動的になりがちであるということや、これらの活動には、フレキシブルに対応できる授業態勢や学習環境が是非必要になるといった点である。これらについては今後の課題として検討していく必要があろう。

(担当  秋葉史裕)

抽出生徒の向上の状況


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