福島県教育センター所報ふくしま No.85(S63/1988.2) -034/038page

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<研修者の感想>

小学校・理科教材製作講座を受講して

いわき市立平第三小学校教諭   薄 多香子

1.当講座への思い

 高校・大学時代、私はすっかり理科嫌いになっていました。

 高校での理科実験中のことでした。希硫酸液の入った試験管をアルコールランプで熱していた友達が、試験管中の液体の急激な変化に驚き、試験管を思わず振り上げた拍子に、私の顔に希硫酸液がまともにかかってしまったのです。

 先生の指示で、何度も洗顔し大事に至りませんでしたが、あのぬるっとした手ざわり、ひりひりとしてどうしようもない痛みは今も忘れられません。それからというもの、薬品や実験に対する恐怖心がついて回りました。

 そんな私が、理科アレルギーを何とか直そうと悲愴な決意で当講座を受講しました。

 私などには考えもつかぬ発想、興味をひきつける製作、安心してできる実験、親切な指導。四日間の本講座は、私の理科嫌いを払拭してくれただけでなく、教師としての力量を与えてくれました。

2.講座の内容

(1) 自己教育力を育てる理科指導

 講義、そして定規を利用しての日の出、日の入りの操作。のみこみが悪くて迷惑をかけましたが、先生の懇切な御指導により何とかついていけました。

(2) 気体に関する実験装置の製作と実験

 5本の注射器を使っての真空ポンプの製作。真空になるように密着させるのが大変で、手に豆を作りながらも楽しい作業でした。

(3) プレパラートの製作と顕微鏡観察

 簡易ミクロトームの製作は、アクリル板をベンダーで曲げるのがなかなかうまくいかず、苦労しましたがなんとか完成。この簡易ミクロトームを使って、ホウセンカの茎やジャガイモの切片を作り、顕微鏡で観察。簡易ミクロトームでは切片がとても薄くなるので、とてもきれいにみることができました。

(4) 堆積実験装置と天体教材製作

 天体関係では太陽高度計と月齢板、地質関係では堆積実験装置を作りました。砂や礫に三色のペンキをつけたカラーサンドによる堆積実験には、なるほどと感心させられました。

(5) 電磁気に関する教材の製作

 電気関係は何となく苦手でしたが、班の先生の指導により、着磁・消磁器とソーラーフォン(太陽光電話)を作りました。コイルを1600回巻いたり、生まれて初めてハンダゴテを使ったりしてやっと完成した時の喜び、いつの間にか電気アレルギーが解消されました。

(6) 天体観測

 星だけは好きで高校時代地学クラブに所属していた頃を思い出しました。この夜は、晴天に恵まれ、火星、木星、金星、土星と輝く星に魅了されてしまいました。

3.学級の子らと共に

 講座を終えて学校へ戻ると、ちょうど「太陽と月」(4年)の単元だったので、太陽高度計をさっそく子供達と作りました。ピアノ線では曲がらず、針金では曲がり過ぎ、うまくいきません。板に打ちつけたくぎも浮くなど色々大変でしたが、何とかでき上がった高度計を使っての太陽の方位や高度の測定に、私も子供達も大満足でした。

 また、着磁・消磁器で子供達のハサミに着磁してみせると、「先生ってすごい」という声が上がり、理科に弱い教師が急に理科の大家になってしまいました。

 あの講座で製作したものは、今もすべて箱の中にしまってあります。

 理科嫌いの私に、教師としてのささやかな自信を与えて下さった当講座に心より感謝いたします。


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