福島県教育センター所報ふくしま No.87(S63/1988.8) -016/038page
ぞれの頭文字に−ability(能力)を合成したものである。
<表−2>
[個性の構成要素] ♦知識・技能 ♦興味・関心 ♦意欲 ♦学習適性 ♦意識・態度 (2)実態調査
1 調査の趣旨
この研究の方向づけとするため,現場の先生方が,日どろ学習活動において「基礎・基本」,「個性」をどのようにとらえ,どのように指導しているか等の現状について調査した。
2 調査対象及び人数
調査に当たっては,県内の小・中・高等学校を小・中・大の規模別に分類し,それぞれの5%を抽出して,それらの学校の校長,教頭,養護教諭,講師を除く全教諭を対象とした。その結果,小学校514人,中学校276人,高等学校295人に調査をお願いした。なお,回収率は,84%であった。
3 調査の方法
質問紙法によるアンケート方式を採用した。
4 調査領域
・学習指導の現状
・個人差に応じた指導の現状
・個別化・個性化を目指す学習形態
・教育システム
・児童生徒の実態把握
・「基礎・基本の定着と個性の伸長」に関する意見
5 調査のまとめ
調査領域ごとの結果を総合すると,「基礎・基本の定着と個性の伸長」に対する取り組みの現状について,次のようなことが言える。
基礎的・基本的な内容の定着を図るためには,一斉指導も必要であるが,個別指導等の方法はかなり有効なものと考えられる。個別指導等は,同時に個人差に応じた指導に必要欠くべからざるものである。この個人差に応じた指導を展開するためには,進度の違いに応じて進める学習や興味や関心に基づいて「学習コース」,「学習方法」を選択して進める学習など,学習形態を工夫することが大切になる。また,ティーム・ティーチングによる指導や多目的スペースを利用した指導などの指導法を効果的に取り入れることが必要である。
更に,指導の在り方については,知識面に重きがおかれ,「見方や考え方」などの面に対する意識が低い傾向がうかがわれる。これは,一人一人の適性にまで目が向けられていない指導の現状を示しているものと思われる。今後は,興味・関心や適性を生かしながら,個性にかかわる「見方や考え方」などに注目して育てていくことが,児童生徒一人一人の個性を生かし,伸ばすために極めて重要であると考えられる。
なお,詳細については,研究紀要第72号をど参照ください。
4.第2年次の研究
本年度は,まず下記のように全体仮説を設定した。今後は,これを受けて教科ごとの仮説を設定し,それに基づいて,協力校において行う検証授業等を通し主題を追究する。
全体仮説
学習指導において,児童生徒一人一人の持っている「よさ」を把握し,その「よさ」を生かす視点から,達成度の個人差と興味・関心,適性に応じる指導の在り方を工夫すれば基礎的・基本的な内容を身につけさせるとともに,一人一人の個性を生かし,伸ばすことができるであろう。 [研究協力校及び検証教科]
・福島市立福島第二小学校(国語科)
・川俣町立川俣南小学校(社会科)
・福島市立吾妻中学校(数学科)
なお,この研究の成果は,紀要として刊行する予定である。
(担当 田中 四郎)