福島県教育センター所報ふくしま No.91(H01/1989.6) -030/038page
研修者の感想
中学校社会講座を受講して 伊南村立伊南中学校教諭 伊藤 政徳
中学校社会講座を受講して伊南村立伊南中学校教諭伊藤政憲文部省教科調査官の渋澤先生のご講義によれぱ,自己教育力とは中学生にとって,あと50年を主体的に生きられる力であり,この力を養うには学び続けていけるだけの基礎基本を身につけることが大切だとしている。また,「実感と納得のある世界」を追究することが個性化への道であり,基礎基本もまた個性的に修得されるものであると述べられた。
本講座は「個性を生かす学習指導案の作成一課題選択学習一」をねらいとして開かれたが,誠に適宜を得たものだった。課題解決学習においては,まず課題づくりが大切との指導があった。そのポイントは,解決意欲を高めるための資料の提示の工夫にあるということだが、渋澤先生流に言えば「実感と納得のある世界」に生徒を引き込む資料の提示ということにほかならない。次に解決意欲の持続が大切との指導があった。そのポイントは学習の仕方の習得であるが,これは,学び続けていける技能や態度としての基礎基本とととらえることが大切で,このことが自己教育力の育成につながるものと確信した。
各地から集まった諸先生方とグループを組んで,指導案作成の演習に入ったが,苦心したことはやはり次の3点であった。
・課題解決学習をさせるぺき内容の選定。
・単元の基礎的基本的内容の洗い出し。
・個性に対応できる学習の手引きの作成。
生徒がすすんで学ぴたくなる授業,ひいては自己教育力を高める授業の創造には,まず,教師自らが研鑽を積み,従来の講義的な授業からの脱皮を図ることが先決であることを痛感した。私たち研修者のために,ぼう大な資料を用意され,ご指導下さった担当の先生をはじめ諸先生方に深く感謝申し上げる次第です。
生徒を生かすパート譜づくりに向けて
_高校音楽講座_
福島県立相馬高等学校教諭 大須賀 芳雄
高等学校音楽講座は,「オーケストラレーション」並びに「器楽合奏における編曲法」を主な研修内容として実施された。講師に国立音楽大学助教授であられる中村隆一氏をお迎えし,私達研修生は,各校の校歌編曲やオルガン曲からのオーケストラレーションの個別添削指導に照準をあわせ,皆それぞれ大学生気分で和やかな中にも意欲を持って講座に臨んだ。
オーケストラレーシヨンについては、1.管弦楽における四群2.各楽器の特性3.オーケストラに使用される音域4.移調楽器等についての総論が講義された後,移調楽器のパート譜作成の実習がなされた。「編曲法」については,1.音楽形態の概念2.音色混合などにみる音楽的プランの講義後,ピアノ譜アンサンブル用和声の総譜づくりを実習した。まとめとして,研修事前課題の各自の校歌を含めた編曲作品を中心に,調や主旋律配置の確認,そして今回の指導ポイントとされた中間和声の記置に注目しての個別添削指導が徹底して行われた。この間適時,センター指導主事によるコンピュター「ミュージくん」を活用したオーケストラ想定編曲作品の具体演奏が紹介され,まさに時代に先んじた創作指導の一方向と可能性への御教示もいただいた。
個人やグループによる創作授業の音楽表現活動は,今日の教育課題でもある豊かな感性を身につけた個性伸長の育みを考えあわせた時,実に大切に取り上げたい表現領域と確信する。高校生をとりまく音楽的環境の豊かさと表現意欲の高まりは,創作におけるオリジナルコンサートのVTR収録や,音楽構成による「音のアルバムづくり」の実践を通し十分に感じることができる。
今回の講座は,時代に目を据えつつも生徒を生かす術を学ぷ充実した編曲等の内容でもあった。