福島県教育センター所報ふくしま No.92(H01/1989.8) -001/038page
巻 頭 言
小さなルネッサンス
次長兼学習指導部長 高 橋 俊 彰
先日ある講座を受講された先生の感想を聞き,深い感銘を受けた。それは,およそ次のような内容であった。
「2泊3日の研修ということで気が重かった。しかし,講座開始とともにそんな気分は吹きとんでしまった講師陣のざん新で示喚に富む講義,所員の実践に裏づけられた説得力のある理論,そして時間のたつのを忘れて取り組んだ実技演習等……あっと言う間の3日間であった。この間、自分の日頃の教育実践を客観的に見つめ直すことができたこと,そしてなによりも有意義であったことは、教師としての自分のあり方を問い直すことができたことである。私の心は大きく開かれ,思考の幅が広がり,新しい活力を得て,初めて教師になった頃のような教育実践への大きな夢を胸に温めることができた。この3日間の研修は,私にとって,まさしく小さなルネッサンスだったのです。」
これは,教師の変容が子どもの変容を促し,教師の実践意欲が子供の学習意欲を喚起するという疑いえない事実を考えるとき,変容のきっかけとなる研修の重要性を十二分に物語っているものと言えよう。
研修の重要性には,もう一つの面がある。研修こそ,専門職としての職能成長を保障する最大の要素であると言うことである1966年,ユネスコ及びIL0は「教師の地位に関する勧告」で,高らかに教師の専門職性を宣言したが,以来,各国ともこの専門職性に深くかかわる職能成長と言う考え方を重視し,具体的な施策づくりに努力しており,わが国もまたこの例外ではない。
このように,教師にとって極めて重要な意味をもつ研修は、本来,自已研修が基本であることは論を待たないが,今日のように,知識,技術とも複雑化.高度化し、かつ急激に変化する中にあっては、個人のみの努力には自ら限度があり,必然的に組織的,体系的な研修の必要性が生じてくる。
当教育センターでは、本年度から県教育委員会の新しい研修計画に基づき,專門職としての望ましい職能成長を期するため,ライフサイクルに応ずる研修講座を実施している。
今,われわれ教師一人ひとりに何よりも求められているのは,教職生涯にわたるライフサイクルの中で,自己の専門職としての職能成長をどう設計し,実践していくかであろう。
大切なことは,目已研修を核にしながらも,いろいろな研修の機会を積極的に活用しようとする柔軟な姿勢であり,自律的な自己革新への意欲である。
当教育センターにおける研修は,まさしくこの継続的な職能成長への努力を援助することに外ならず,今後も数多き「小さなルネッサンス」の誕生を願いつつ努力していきたいと思う。