福島県教育センター所報ふくしま No.95(H02/1990.6) -015/038page

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■アイデイア紹介■

「読んで,拾って,笑って覚える」

福島高等学校教諭  五 輪 美智子

1. はじめに

 高校進学率も94%となり,年毎に生徒の多様化が進んできた。いくら腰の重い私でも「古典は千古不滅」などと高を括ってはいられなくなった。まずは授業の再検討をと,ノートをひっくり返したり,卒業生まで動員して記憶をたどったりしたものの,なかなか授業の全貌は見えてこない。そんなある日,音便形まじりの品詞分解にひどく苦しむ生徒諸君の顔を見て,はたと気がついた。「自分はこれ程苦しんで教えた事があるのか?」と。今度はこちらが冷や汗しとど,立場は容易に逆転した。教師が主役とばかりに古典に酔ってしゃべりまくるのに,つきあわされるのは生徒にとってえらい迷惑!そこで先輩に相談し,仲問うちで議論し,悪い頭をフル回転させて辿り着いたのが,やはり「わかる授業」。主役であるべき生徒曰く「わかるだけではイマイチだ。やっぱりおもしろくなくては」と。なるほどと思いつつ,「わかる」も「おもしろい」もなかなかの曲者,次に手当り次第の試みをあげて先輩諸氏の御指導,御助言を請うことにする。

2. 読む

 何事も初めが肝心,古文の入門期には特に「大きな声で読む」事を実践している。読み方にもいろいろあるが,私は句読点で区切り,教師の範読次いで生徒の斉読という形で,それを繰り返して読み進める方法を採っている。小学生のようではあるが,読みが習憤化すれば,声に出すので音便形や難読文字の読みも覚え易く徹底し,なんといっても古文のリズムを体得する事ができる。その上全員参加で眼気もふきとび,そのうち品詞が見えてくればしめたもの,古文がどんどん身近になる。どうしても教師は口語訳と文法指導に力を注ぎがちだが,ここは思いきって教材を精選し時には全訳,時には重要古語のみ()にした穴あきのプリントを作ってわたし,口語訳を早めにすまして,内容を味わい中味について話し合ったり感想文を書かせたりするのも良いのではないか。なんといっても我々は現代語で毎日を暮らしているのだから。読んで話す。話す事を書く,書いて考えるといった作業を授業の中で生かしたいと切に思う。

3. 拾う

 私は色鉛筆をよく使用する。それで用言や助動詞を生徒諸君といっしょに拾って,丸をつけたり,そめたりするからだ。一つの品詞を徹底的に拾って発表させ,一つ一つに答を出す作業を二・三回繰り返すと,生徒はそのうち色鉛筆でカラフルになった教科書を持っ


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