福島県教育センター所報ふくしま No.95(H02/1990.6) -021/038page
生徒指導・教育相談実践講座あなたもカウンセラー
一非社会的行動をもつ児童についてー教育相談部 阿部 貞夫・玉川 邦夫・遠藤 美代子
昨年度,「事例を通した具体的な教育相談の進め方」について個人,家族,さらに集団へのかかわり等,4回に分けて掲載してまいりました。お役に立ちましたでしょうか。
本年度も,年々複雑・多様化している問題行動にどのように こ 対応していくべきか,事例を通して考えて参りたいと忠います。引き続きご高覧ください。
本号では,校内研修で「不登校」についての理解を深めながら,適切な指導援助を進めることができた小学校の事例を紹介します。
95号 校内研修に基づく不登校児への対応例
96号 家族カウンセラリングについて
`※(97号 特集につき休み)
98号 集団理解と集団指導について校内研修に基づく不登校児への対応例
母親からの電話朝8時過ぎ,A男の母親から受け持ちのT先生に電話がきた。連休明け3日目のことである。1日欠席では「腹痛で休ませます」と、言う連絡であったが,この日の電話口から聞こえる母親の声は様子が違っていた。かなり興奮気味で,「'A男が腹痛を訴えながら,『学校に行きたくない』と言い出したんです。学校で何かあったんでしょうか。こんなこと初めてなんです」
それから母親はA男の様子をほそぼそと話し始めた。T先生は母親の話を聞きながら,学校生活の中でのA男の婆を思い出そうとしたが,印象に残る姿は思い浮かばなかった。それだけA男は学級で目立たない静かな児童であった。
「特に学校で嫌なことはなかったと思います。クラス替えや連休の疲れが残っている のでしょう。無理をさせないでください」と言って電話を切った。
A男は次の日も,その次の日も休んだ。理由は同じであった。T先生にとって初めての「不登校児」であった。
S小学校は人口1万人の小さな町の中心にある中規模校(18学級)。T先生はS小学校勤務2年目で,昨年は2年の担任,4月から5年を担任している。細かいことにも気を配っている熱心な先生である。また,時々面白いことを言って笑わせるので「ゆかいな先生」でも通っている。
校内研修 A男が休み始めて5日が過ぎた。そんな折り「第1回校内研修会」が開かれた。「不登校」についての理解を深め,先生方との共通理解を図ったこの会は,初めて「不登校児」を抱えたT先生にとって