福島県教育センター所報ふくしま No.101(H03/1991.11) -015/038page
室へ登校して,校長先生の温かいかかわりで,プリント問題など自主学習ができるようになった。
(3)級友への適応
【クリスマス会への参加】
・学級でクリスマス会を予定しており,S男は参加したいと思っていた。しかし,みんなに会うことが不安でたまらなかった。
⇒「行きたい」けどはっきり伝えられないS男の気持ちを担任に伝え、次のような連携をとった。
〇担任は、S男のために学校の許可を得て近くの公民館を借り、会を開くことにした。
〇会のプログラムにスポーツ的なレクリェーションを取り上げ、S男の緊張を和らげるようなことを盛り込むように担任と話し合った。
・今までは,学級の中に入っていけなかったS男だが,学校という枠を外した場所でのクラス会であったので参加することができ,久しぶりに級友と顔を合わせ,楽しいひとときを過ごして満足していた。
・クリスマス会に参加できたことを足掛かりとして,3学期始業日から3日問連続登校し,学級の中で勉強した。しかし4日目以後,また登校を渋り休んだ。
(4)学級のなかで学習ができる。
【再登校への登校刺激】
・登校はできたもののS男の心理状態(不安や葛藤の闘い)からまる一日の登校には無理があった。
・やっとの思いで登校したが,表面の笑顔やなんでもないような態度とは裏腹に,不安と緊張の極みでいるS男の胸の内を知った。
⇒みんなに会えたという自身がついている。S男の規則的な生活と家庭の中での手伝い。学校へ行けなくなっても友達の行き来は激しい。担任の家庭訪問もあり、家庭の中でも学校の話題を出して登校刺激を与えた。
ただし、学校にいる時間的規則をしない。
・再登校するようになった。3学期始めの登校では,緊張と不安で疲れきった様子だったが,再登校後は,学校から帰宅した後に友達と遊びに出かけていく姿さえ見られるようになった。
6.考察
〇初めは神経質になっていたS男だったがもともとからだを動かすことが好きだったため,運動を通しての関係がとりやすかった。面接は,思いっきり汗をかいた後のそう快感や,蓄積されたストレスの発散となり,着実なエネルギーの高まりとなったものと考える。
〇S男の学力の低下と気持ちの繊細さが,学級集団への不適応を示していたが,学力に関しては,長期休業中の学習会をきっかけに,学習を少しづつやるようになり自信をつけてきたと考える。
〇家族や担任の協力を得ながら,段階を経た指導援助を心がけることにより,徐々に集団に適応し登校へと結びついたものと思われる。