福島県教育センター所報ふくしま No.107(H05/1993.6) -015/038page
4.実験ノートの活用例
この実験ノートには現行「理科I」の速度・加速度,落下運動のところで学ぶ内容をすべて取り上げてあるので,これらの内容を学習するときに,補助教材として全面的に活用できる。新教育課程の科目では,「物理IA」,「物理IB」で活用できる。特に「物理IB」の内容に新しく位置付けられた探究活動のねらいは,この実験ノート作成のねらいと共通する部分が多く,大いに活用できるのではないかと思う。1テーマ1時間(50分)(ただし,第5日と第9日は2時間),全体で14時間を予定しているが,状況に応じてそれ以上時間をかけてもよい。第6日に行う斜面の実際は,素朴な実験装置一組でクラスの生徒全員が参加でき,落下運動についてのガリレオの仮説が検証できるので,科学の方法を教えるうえで大変効果的である。写真はガリレオの斜面の実験を本教育センターの理科講座で実施している様子である。
5.おわリに
実験ノート「自然の探究」はガリレオの「新科学対話」を素材とし,科学の方法とはどういうことか理解させることをねらいとして作成した。高校の物理学習の導入の段階で,科学の方法や,物理的な探究の方法がどういうことかを,少しでも理解できれば,以後の学習にプラスになると思う。
しかし,科学の方法を習得させるためには,この実験ノートだけでは不十分である。そのためには,観察や実験を行う中で,科学の方法を自分で適用しながら探究し,問題を解決していくという体験を積み重ねていくことが必要である。
ガリレオは自らの生涯を費やして研究した成果を,探究の過程をも含めて,やさしい話しことばで後世の人々に伝えようとした。理科教育にたずさわる者として大いに学ぶべきものがある。参考文献
1) ガリレオ・ガリレイ(今野武雄,日田節次訳):「新科学対話(上・下)」(岩波文庫,1937・1948)
2) 板倉聖宣:岩波科学の本4「ぼくらはガリレオ」(岩波書店,1972)
3) 渡辺正雄,石川孝夫,笠耐:プロジェクト物理1「運動の概念」(コロナ社,1977)
4) 朝永振一郎:「物理学とは何だろうか(上)」(岩波新書,1979)