福島県教育センター所報ふくしま No.107(H05/1993.6) -021/038page
<<学校からの実践報告> >除法の技能を高める系統的指導の在り方
−パズル式乗法九九習熟器の開発とその効果− 福島市立福島第三小学校教諭 黒須 隆昌
1.はじめに
私は,平成4年度より新学習指導要領の完全実施をふまえ,「実践の中で考えを広げる指導」を研究主題とし,子供たちが自分の考えで新たな知識や技能を獲得していく学習に用いる教具の開発に取り組んでみた。
除法の指導は,乗法と関連させながら進めることが大切である。
ところが,6年生の乗法九九に関する実態では,乗法九九をそのまま用いる技能は個人差が小さいのに比べ除法の中で用いる技能は個人差が大きくなっている。(下図)
このことは,乗法九九を唱え,覚えてはいるものの,乗法の意味としての理解を生かし,除法の意味と関連させて乗法九九を使いこなす技能カ不十分であることを示している。そこで,除法の中で乗法九九を用いる技能を高める教具の開発を試みることにした。2.仮説
乗法九九の式と積をパズル式に一致させる遊びをさせれば,式から積を考えたり,積から式を考えたりすることによって,乗法九九を除法の中で用いる技能が向上するだろう。
3.研究の概要
(1)パズル式乗法九九習熟器の構造
パズル式乗法九九習熟器は,70センチメートル四方の板に格子状の枠をつけ,その枠の中に乗法九九の積を書いた5センチメートル四方のプレートをパズル式に当てはめて遊ぶ教具である。プレートをはずすと,枠の中に書かれた式が現れる。このプレートの裏側には,答えによって形が違う切り込みがあり,不正解だとはまらなくなっており,この機能によって確実な自己評価ができる。
(2)使用方法とねらい
1. 式を見て,当てはまる積を探してはめ込む方法。
2. 積を見て,当てはまる式を探してはめ込む方法。
1 のねらいは,覚えたばかりの乗法九九を定着・習熟させることであり,乗法九九を乗法計算の中で用いる技能を高める'ことである。
2 のねらいは,積の因数(乗法・被乗数)を直観的に見通す力を養うことであり,乗法九九を除法計算の中で用いる技能を高めることである。
基本的には一人一台を使うのが理想的だがグループ対抗で正解を競うなどの利用方法も可能である。