福島県教育センター所報ふくしま No.111(H06/1994.6) -032/038page
物理におけるべクトル量の合成や分解を理解させるための指導の工夫
〜五感を使った教材を通して〜
福島県立安積女子高等学校 清 水 嘉 之
I 研究の趣旨−研究の動機−
物理の確怒テスト・中間考査の結果を分析してみると(図1),単純な速度の分解はできるが,相対速度を求めたり,2物体間に複数の力が働き,その合力を求めたりするような応用的問題になると,正答率が下がっていることがわかる。特に力や速度が直線方向でない場合,正しく合力や合成速度が求められないことがわかった。
これらに共通していることはべクトル量を正しく合成したり,分解することができず,またそれらの物理的意味を理解してないことである。物理量としてのべクトルの合成・分解は力学・波動のみならず,物理全般に関わる基本的事項である。そこでこのベクトル量の合成・分解の学習において五感を使った教材や指導法を取り入れればより理解が深まるのではないかと考え主題を設定した。
確認テストの分析(図1) 問題内容 加速度を求める a-tグラフをかく v-tグラフをかく 等加速度運動 ベクトルの分析 ベクトルの合成 合力と加速度 物体間の運動方程式 正答率% 89 40 51 78 61 9.6 26 46 II 研究の仮説
力や適度などのべクトル量の合成や分解の学習において,五感を使うような教材や指導法を取り入れれば,それらの物理現象をイメージ化でき,理解が深まるであろう。 III 研究内容
1. シミュレーションで用いるパソコンソフトの活用法の研究
2. べクトル量の合成や分解を理解させるためのワークシートの作成,実験の作業工夫
IV 研究の実際と考察(1) 単元名「周期的な運動」
(2) 単元の目標
1. 等速円運動において周期,回転数,角速度の意味及ぴ各量間の関係がわかり,速度,加速度,向心力というべクトル量の大きさや向きがわかる。
2. 単振動における変位,速度,加速度,単振動する物体に働く力などのベクトル量の大きさや向きがわかる。
3. 万有引力の発見につながったケプラーの3つの法則がどのようなものであるかを理解する。