福島県教育センター所報ふくしま No.115(H07/1995.7) -001/042page
(巻頭言)
教 育 の 百 花 斎 放
福島県教育センター所長 永 山 三 郎
いま学校教育の在り方が問われているとか,教育改革の大きなうねりの中にあるとか,これまでの学校教育バラダイムから,生涯学習パラダイムへの転換期にあるとか,これまでにない議論が各方面から噴出している。
平成元年3月,現学習指導要領が告示され,4年以降小・中・高等学校と本格実施されるなかで,それらが“新しい学力観”という教育概念で示され,また同時進行で行われてきた月1回の学校週五日制も,本年4月から月2回となり,学校教育のありようについて,必然的に取り組まざるをえない状況に追いこまれてきたものと思われる。
これまでの教育改革への取り組みを振り返ってみると,昭和59年設置の臨教審の第4次答申以降,新しい時代に対応する教育諸制度の改革や教育課程基準の改善のための,第14期中教審や教育課程審議会の他,社会の変化に対応した新しい学校運営の在り方を求めるものや,大学教育の改善,高等学校の改革,また情報化の進展に伴う新たな教育などについて,数多くの“〜に関する会議”,等が設置され,今日学校数育がかかえる問題の解決と同時に,21世紀の教育バラダイムのビジョンについて,次々と提案がなされてきた。
またこれまでにはなかった経済界からも,“学校も家庭も地域も自らの役割と責任を自覚し,知恵と力を出し合い,新しい学びの場をつくろう「学校から合校へ」”と,学校のコンセプトを新たな視点から見直した提言もあり,今後の幅広い議論のたたき台となることを期待して提案されている。
一方本年4月,第15期中教審が発足し,21世妃を展望したわが国の教育の基本的な在り方を中心にすえ,完全学校週五日制を視野に収めながら新しい学校像とそれにふさわしい教育内容,さらに,家庭と地域社会の教育機能の向上を検討するよう諮問された。これらの内容は,21世妃の生涯学習及び学校週五日制社会を視野におく新学習指導要領改訂の基本的な方向づけとして,来年度発足が予想される教育課程審議会の審議内容に大きくかかわってくるものと注目されている。
このように臨教審発足以来10年,21世紀の教育バラダイムに向けた取り組みがすすめられてきたが,新世紀に4年を残す今日,直接学校教育を担う私たち教師一人一人も,すすんで百家争鳴の渦中にありたいものだと思っている。
例年新年度となる4・5月号の教育誌には,“教育は人なり”“学校教育の充実は管理職にあり”の発想から,教師論や管理職論でうめつくされてきた。しかし今年は教育改革の気運やうねりの申で,これらの課題を実践する教師や管理職の認識や意識の改革を強く求め,そのための自己改革や自己研修を大さな課題として取りあげている。
特に今話題の新しい学力観に立つ教育については,3年間の実践を踏まえ,学習指導における指導と支援の問題,授業観と評価観の在り方等,臨教審以来の各提言が理念としてきた,個性尊重や個を生かし子どもたちを中心に捉えた教育のありようについて,多くの提案がなされている。
またこれらの基盤となる学校論も,学校週5日制の2回実施の影響やそれへの対応の在り方以上に,学校週五日制が新世紀教育への変革の起爆の中核にあること,それが新しい学力観の理念と反応して学校論の視点も,生涯学習社会の学校・家庭・社会が連携する開かれた学校,社会の中の学校,コミュニテイ・スクール等,新しい教育バラダイムにふさわしい,学校経営観,指導観,授業観,評価観等の幅広い視点からの論説がなされ,まさに教育の百花斎放の観を呈している。教育改革がさけばれて久しい,時は今,まさにターニングポイント,次代の深遠な教育観を探る好機にあり,願わくは,教育関係各誌の講読を望みたい。