福島県教育センター所報ふくしま No.116(H07/1995.11) -020/042page

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「相手が嫌がることをする,させる」のいじめ解決に向けて指導援助した事例

1 はじめに

 この型のいじめは,自分のストレス解消の 手段として,相手に精神的苦痛を与えること を主な目的に,長期にわたって行われます。

  〇「嫌がることをする」型のいじめの例

  • 持ち物に落書きをしたり,持ち物を隠したりする。
  • 根も葉もない噂や悪口を言う。
  • 執拗に冷やかしやからかいをする。

  〇「嫌がることをさせる」型のいじめの例

  • 脅して万引きをさせる。
  • 別の子どもをいじめさせる。
  • 無理やりリーダーにさせ,責任を押しつけて仕事をさせる。      

 

2 問題の概要

〇 2学期になり,学年主任がA男の頻繁な職員室来訪に気づき,担任も授業中のA男の目立つ発表に対する周囲の冷笑を観察した。最初の面接で,A男は「授業中に笑われることは,別に気にならない」と,話していた。

〇 2学期半ばすぎ,A男の下足が隠された。再度面接すると,A男は「もう,おれは嫌だ」と,つらい胸の内を吐露した。A男の話から.B男らを中心に授業中の冷笑や運動着隠し,A男名を使った女子生徒へのラブレター郵送などが行  われていたことがわかった。

〇 級友の話や教師の観察から,B男らはA男を異質なものと受け止めている多くの生徒の気持ちを代表する形でいじめを行い,自分たちの存在を学級の中で誇示していることがわかった。

3 指導援助の方針

 指導援助初期の段階でA男の内面を理解できなかったことを反省して,次のような指導援助の方針を立てた。

〇  A男に対して ………心の痛みを受け止め,安定を図り,自分らしさのいかし方をともに考える。

〇  B男たちに対して ………不満を受け止め,A男の気持ちを思いやった行動をともに考える。

〇  学級に対して ………−人一人を大切にし,多様な級友の存在が認め合える雰囲気をつくる。

 適宜家庭と連携を図りながら,上記の指導援助をすすめる。

4 指導援助の経過

【A男への指導援助】

 学年主任がリードしながら教職2年目の担任と ともにA男との面接をすすめた。

[A男との面接]

《学年主任・担任》

  • 「我慢していたんだな」
  • 「だいぶひどかったもんな」
  • 「しつこいと自分の気持ちを押さえられなくなるよなあ」

《A男》

  • 「(沈黙)」
  • 「少しなら我慢できるけど・・・・,しつこくてえ・・・・」
  • 「もう,嫌になっちゃった」

イラスト


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