福島県教育センター所報ふくしま「窓」 No.128(H11/1999.11) -034/042page
研究紹介
思考活動を活発にする観察・実験の工夫・改善
教育センター科学技術教育部 安田良一
I 研究の趣旨
理科において重視されている観察・実験の工夫・改善を通して、思考活動を活発にして確かな知識・理解を獲得させる授業はどうあればよいかを研究した。
II 研究の基本的な考え方
1 思考活動について
本研究では、思考活動を、当面の課題を解決し事象を理解していく過程であると考え、次のような活動ととらえた。
思考活動 1 学習課題は何かを把握する。
2 結果を予想する。
3 課題を解決するための方法や手順を考える。
4 工夫しながら課題解決に取り組む。
5 結果を、今までの体験や学習内容等と関連付けながら、はじめの予想と比較し検討する。
6 自分で考えて結論を導き、課題を解決する。
7 自分の考えをまとめたり発表したりする。
8 新たな疑問に気付く。思考活動が活発に行われたかどうかは、調査1「思考活動の程度」として、これらの項目の自己評価を事前・事後に行い、調査した。
2 思考活動における観察・実験の役割
理科の学習では自然から直接学ぶことが大切であり、そのため観察、実験、観測、実習等が行われる。これらの活動のきっかけとして、学習の課題があり、予想や仮説を設けたりする。また、観察・実験の結果得られた情報の処理やグラフ化といった作業が必要となり、それらを多面的に考察することが必要である。
このように、理科では、観察・実験を行うことによって、活発な思考活動が展開される。観察・実験により展開される思考活動の過程では、様々な科学的な思考が働くと考えられる。科学的な思考は下表の1〜10(○囲み)のように、いくつかの要素に分けてとらえられる。
これらの要素の中から、課題や事象が単純か複雑か、具体的か抽象的か、などの程度に応じて、必要な要素が組み合わされ、科学的な思考活動が行われる。その結果、表のI〜IVのように段階的に事象理解が深まると考えた。
観察・実験の工夫・改善が思考活動にどのような効果があったかについては、調査1「思考活動の程度」の変容及び調査2「観察・実験に対する生徒の評価」などから分析した。
また、科学的な思考が働いた結果としての自然事象への理解が深まったかどうかは、調査3「事実・相互・因果・総合関係の理解の程度を見るテスト」で把握した。